31 / 31
第28話
隣が、温かい。昨日は自室と宛がわれた部屋で寝ていたはずなのに。
ゆるりと目を開け視界いっぱいに移る啓影の顔にソリテは悲鳴を上げそうになって寸でで押しとどめた。
バクバクと早鐘を打つ心臓を落ち着けながら隣の啓影を起こさぬよう室内を見渡し「……共用の寝室じゃねぇか」呟いた。
家具の配置もなにもかも置いてあるものは自室にはないものが多く、大抵はここに引っ張り込まれることも多いものでいつしか内装は覚えていた。
寝る前は間違わずに自室に行ったはず。なのに、何故? 不思議そうに首を傾げ考える。トイレで起きてその後寝ぼけてここに来てしまったのだろうか。
……まあ、そんなこともある。この屋敷にある部屋は書斎やキッチン等を除けば大抵似たようなドアの形をしているせいで間違えてしまう。
それはいいとしてどうして啓影が隣で寝ているのだろうか。疑問は尽きぬがそれよりもこうやって近くで寝ている姿を見るのは少なく好奇心の方が勝った。
そっと顔を近付け顔を眺める。同性であったとしても彼の顔立ちは綺麗だと感じ見惚れるほどだ。人ならざる者故だからだろうか。芸能人にいるようなイケメンという者よりも浮世離れた美しさを感じる。
頬に手を伸ばし軽く触れる。やっぱり冷たくは感じるものの嫌な冷たさでもない。指を頬から唇へ落としかけソリテは慌てて手を離した。
「……触らんの?」
「!?」
寝ていたであろう人の口から言葉を発せられ別の意味で驚きベッドから落ちそうになった。
そんなソリテを啓影は抱き寄せる形で止め間近で先程まで見ていた顔が近付き反射的に目を閉じた。
ちゅ、と軽いリップ音が聞こえ唇に感じた感触にかあっと顔が赤く染まる。
「んは、赤いなぁ、ソリテ」
けらけらと楽しそうに笑う啓影に目を開けてすぐに軽く睨み付けた。
でも、睨みなんて怖くないとばかりに愛おしそうに自身を見やる視線がこそばゆくソリテは視線をそらした。
「寝とった俺になにするつもりやったん?」
「別に、なにも」
「ふぅん?」
揶揄う様な声音にぺしりと二の腕を叩いて離れようと身をよじれば許さないとばかりにキツく抱き締められソリテは仕方なく抵抗をやめた。
代わりに肩に額を擦り付ければ「可愛いなぁ」なんて声が降ってきた。
「……お前の可愛い基準がよくわかんねぇ」
「ソリテはなにしてもかわええんよ」
「……眼科行くか?」
「正常やし」
顔を上げれば額を合わせじぃっとこちらを見つめる啓影の視線に負けじと見つめ返すも途中で恥ずかしくなってソリテは視線を逸らす。
しばしの沈黙が気まずいわけではないけれど、ソリテは気になったことを尋ねた。
「どうして、隣で寝てたんだ?」
「仕事終わって寝よーって思ってんけど一人で寝るのはなんか寂しいなぁって思った時こっちに入るソリテ見かけてほんなら一緒に寝よって思って」
「……なんもしてねぇよな」
「なん、期待した?」
「してない」
即座に否定してはくすくすと啓影は笑った。
「ソリテと寝たらええ夢見れんねん」
「お前でも夢を見るんだな」
「どういう意味やー?」
「……別に、深い意味はないけど。不快にさせたら悪かった」
人ではない彼は夢なんて見ることがないと思っていたから素直に言ってしまった後、失言だったかと思いすぐに謝罪をした。
気にしてへんよ、と啓影はそう言った後抱き締める力を少し強めた。
「ずっと、悪い夢ばっか見とったけどソリテと出会って寝るようになってからはええ夢ばっかやねん」
「そう、なのか?」
不思議そうに瞬きを繰り返しては彼の言葉に嬉しそうに笑った。
自分が誰かの役に立っているようなそんな気がして嬉しくなった。
「それはよかった」
「うん。ありがと、ソリテ」
にへらと啓影が笑えばソリテも小さく笑い返す。
しばらく抱き締め合っているとぐうっとソリテの腹が鳴った。
「……ふは。朝ごはんにしよか」
「……ん」
ともだちにシェアしよう!

