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第4話
数分後に戻ってきた斎田さんに続いて
裏の門から屋敷に入る。
使用人の部屋に連れてこられ
あれこれと説明を受けた。
とりあえず、僕は掃除や配膳といった
仕事をするために雇われたらしい。
わざわざ男娼を買ってあてがうなんて
随分珍しい旦那様なんだなぁ
使用人用の服を渡され、
すぐに着替えると別館というところに
連れてこられた。
「初日はここの掃除をしてもらいます。
昼に一度休憩があるので
正午にまた顔を出しますので
それまでお願いしますね」
「は、はい!」
斎田さんは掃除用具を一通り渡すと
別館から去ってしまった。
本館よりは圧倒的に小さいし
もしかしたら僕の実家よりも
小さいかも。
今日1日でなんとか終わらせるくらいの
面積だと思った。
とはいえ、ゆっくりはしていられない。
僕は覚悟を決めると
まず2階から手をつけることにした。
実家で使用人の仕事をしていた頃、
無心になれる掃除が1番好きだった。
ただ、置物や絨毯が掃除前から
1ミリでもズレていると罵倒された。
複数ある窓のうち1つでも磨き忘れると
罰として夕食を抜かれたり
木の棒で叩かれたりした。
こんな大きなお屋敷の旦那様だ…
僕の家のチェックよりも厳しいのでは…!?
気を抜かないで最後まで自己チェックしなきゃ。
僕は黙々と掃除にかかった。
なんとか午前中のうちに2階を終わらせないと
今日のノルマ達成が怪しくなる。
あとは階段登ってすぐのカーペットの
位置を調整すれば2階は終わるはず。
確か柱から右に5センチくらいのところに
角を合わせれば…
自分の家のカーペットとは若干素材が違うので
ミリの調整が難しいな…
と、格闘していると斎田さんが現れた。
「お昼休憩のお時間です。
本館の使用人用食堂に案内します」
「あ、はい。よろしくお願いします。
あのっ、2階の掃除が終わったのですが
洗剤が足りなくなりそうで…
あと、雑巾がそじてしまって…
代わりのものってあったりしますか?」
本来であれば与えられたもので
掃除し切るのが仕事なのに…
怒られてしまうだろうかと
恐る恐る斎田さんに伝える。
「なんですって?」
「す、すみません!1階はもっと用具を大事にして掃除しますので」
慌てて謝ると「そうではありません」と
手で制された。
「この時間で2階の掃除が終わったのかと
聞きたいのです」
「え、は、はい。あ…、もっと丁寧にするべきですか?1日で終わらせることしか考えた無くて…、旦那さまは怒ってしまうでしょうか」
「いえ…」
斎田さんがそういうと、
ぐるりと辺りを見回す。
「このくらい磨けていれば問題ありません。
そんなことよりもスピードです。
貴方はなかなか見どころがある。
午後からも精進してください」
「えっ!?あっ、は、はい!」
褒められたことなどなかったので
僕は驚いてしまう。
そうこうしているうちに食堂につき、
説明を受けた。
出る料理はみんな同じものを食べるようで
日によって変わるらしい。
自分で取りに行って、好きな席で食べるようだ。
悲しいかな、実家での食事よりも
圧倒的に豪華だった。
ざっと見た感じ、働いている人も
実家が1番栄えていた頃よりも
10倍はいる気がする。
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