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第14話

※主視点 疲れ果てて眠ってしまった スイを眺めながら客人を待つ。 大学校の頃、たまたま同じ学部に 一条忠嗣がいた。 たまに社交会で会うくらいだったが なぜか一方的に因縁をつけられ 敵視されてきた。 別になんてことはないが 大した能力もないのに プライドだけは高く少々鼻についた。 その後、それぞれ家業に就いてからも 企業単位でこちらに喧嘩を売ってきたため 徹底的に勝負をさせてもらった。 その結果、一条は衰退したわけだが 喧嘩を売ってきてたのはあちらだし こちらは卑怯な手は一切使っていないのに ぼろぼろと崩れていったから 同情する気は少しもない。 その一条がついに息子を娼館に売ったと 聞いたので興味本位で買ってみたが (それなりにコキ使ったら捨てるつもりだった) まさかどこにも出してない弟がいたとはな。 容姿から能力から どう考えても一条とは思えない。 そんなふうに考えていると ヘアのドアがノックされた。 「もう、なんなんですか!こんな時間に!」 「悪いな。どうせ暇だろう」 「僕は暇なわけじゃないぞ! 学者というのはだな…」 またクドクドと話が続きそうだったので 手で制した。 「そんな学者様にプレゼントだ」 そう言ってスイを指差した。 この客人は私の数少ない友人の1人。 人類学者をしている 金持ちの家のニート息子だ。 人類学者を名乗ってはいるが 特に研究室に入るでもなく 親の資産で資料を集め 適当に読んでたまに本を出すような奴だ。 「ほぉ?南蛮人? のわりには顔立ちは和人のようだし 体もかなり小さいな」 「私が1番気になるのは 腹にある紋章だ」 「紋章?」 「これだ」 あまりスイの肌を見せたくはないが 口で説明するのは難しく、 私は仕方なくスイの服をめくった。 「ほぉ…、これは…シーマ族では?」 「シーマ族?」 「そう。初めて実物を見たな。 高い知能を持ち、自然を愛する民族で 最後に確認されたのが10数年前だ」 「その生き残りということか?」 「あるいはそうかもしれない。 他の説では、その知性と自然への敬愛のために、人里離れた深い森でひっそり暮らしているのではとも言われている」 「なるほどな。どうりで能力が高いわけか」 「ちなみに、体が小さいのも特徴で 個体によっては二次性徴が来ないものも いるらしい」 「繁殖できるのか?」 「そういう個体は出来ない。 だから減っているわけなんだけどね。 あ、ちなみにシーマ族に性別はないんだよ」 「は?スイは男だろう?」 「見た目はね。 ただ、二次性徴を迎えていれば 男の見た目で妊娠もできるし 妊娠させることもできるんだ。 二次性徴が来ない種族だから なんとかそれで繁殖してるみたい」 「なんだか頭が混乱してきた」 「流石の啓(ひらく)様もお手上げか」 「私の知識の範疇を越えすぎている。 なるほどな…、もっとよく知る必要がある」 「ついでに僕にも研究させてくれよ」 「いや。スイは私が買ったんだ。 お前には指一本触れさせない。 さあもう帰ってくれ」 「はぁ!?こんな時間に呼んでおいて 済んだらポイかよ!」 「そういう約束だろう」 「はぁ…、もう信じられない。 この子に飽きたら僕に譲ってくれよ」 「そんな未来はない。安心しろ」 そういうと、その学者気取りは 不貞腐れたように帰っていった。 利用させてもらって悪いが、 シーマ族の実物を見せてやったんだから 少しは感謝してほしい。 とにかく混乱してはいるが 眠ってしまおうと 私も布団に潜り込んだ。

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