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第15話

朝起きると隣にスイがいなかった。 私は眠りが深い方ではないが 疲れていたのかスイが部屋を出たことに 気づかなかった。 逃げたのか? だが、あれほど長く行為に及んでいたのに そう易々と歩けるとは思えない。 斎田を呼んで問いただすと 「お部屋にお戻りです」 と言われた。 「よく歩けたものだな」 「ほとんど歩けてなかったですよ。 それでも、朝から働こうとしていたので 休ませました」 斎田の視線に責めるような意志を感じる。 「今日一日、休ませるといい」 「それでは納得できないとのことです」 「ふっ…、お前に似てなかなかの 頑固者のようだな」 「そうお思いなら手加減をされては?」 やたらとスイを庇うような物言いだ。 初日にしてスイを気に入ったようだ。 斎田が人を気にいるなんて珍しいな。 「それは難しい話だな。 悪いが、昼の仕事を調整してくれ」 「…、かしこまりました」 不服そうに斎田が頭を下げる。 普段は忠実なのに珍しい。 「それと、夜になったら ここに来るようにスイに言っておいてくれ」 「…、かしこまりました。 随分と気に入られたのですね」 「ああ。少し気になることもある」 「左様ですか。 それでは、失礼いたします」 いつも通り恭しく頭を下げて 斎田が部屋を出ていく。 今日も早めに仕事を終わらせるようにしようと 私も支度を始めた。

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