22 / 75

第22話

※スイ視点 カーテンから差す日差しで 僕は目を覚ました。 あれ…、ここはどこ? 寝る直前の記憶がないな… と、ぼーっとしてると隣に人の気配がして 横を見る。 あ、主様!? また僕は主様の部屋で寝てしまったのか… と思ったところで、昨晩のことが 次々に蘇る。 主様に噛まれたこととか 最後に斎田さんが部屋に入ってきた気がしたこととか… とりあえず、部屋に戻らなきゃ。 慌てて布団から起きようとしたけど 昨日よりも腰が痛い… これ、歩けるかな 内心、不安になりながらも お昼の仕事があるからと 体に鞭を打って這いながら部屋のドアを開ける。 また斎田さんが近くにいたりしないかな と思っていたら、 案の定、斎田さんが廊下にいた。 「また1人で出てくるだろうと思ったら その通りでしたね」 「あ、す、すみません。 また手を貸していただけないでしょうか…」 「それは構いませんけども」 斎田さんがまた僕を抱き上げる。 「毎度、本当に申し訳ございません。あの、肩を貸していただくだけでも大丈夫です」 申し訳なくてそう伝えると 「スイさんほどの重量なら持ち上げた方が早いので」と言われた。 斎田さんも忙しいだろうから 早く済むと言うなら従うしかない。 僕は頷いて大人しく揺さぶられた。 その揺れが心地よくてうとうととしてしまう。 船を漕いでいると「やはりお疲れですね。ひとまず、今日はお休みください」と言われた。 「いえ!大丈夫です!揺れが心地よかっただけですので!」 「まるで赤子のようですね」 と、くすくす笑うので僕は少しムッとする。 「僕、17歳です」 「それは知っています。 今日の夜も旦那様のお部屋に向かうように言われていますので、夜に支障が出ないようにお昼はお休みください」 「でも…」 「昨夜は気絶してしまったのでしょう? 無理なさすぎです。 スイさんは、昼のお仕事の方がやりがいがあるのでしょうけど」 「そんなことないです…けど」 図星を突かれて狼狽える。 お手紙の仕分けと主様の部屋に行くことでは 前者の方が気が乗る。 けども、言われた仕事は仕事だから 主様の中で優先順位が高いものからすべきだ。 たかだか買われただけの僕が 意見していいはずがない。   「わかりました。今日は夜までお休みします」 「そうですか。お食事は申し訳ないですが 自力で食堂に行ってもらえますか?」 ホッとしたような顔で斎田さんが言う。 「大丈夫です。むしろその方が気が楽なので」 「それでは、またお呼びの時間になりましたらお迎えにあがりますね」 いつのまに自室に着いたのか、 斎田さんが器用にドアを開け 僕を布団の上に下ろしてくれた。 毎回運んでもらうわけにもいかない。 筋力と体力つけなきゃな… 「ありがとうございます」 「おやすみなさい」 「…おやすみなさい」 斎田さんは微笑むと僕の頭を一撫でして 部屋から出ていった。 斎田さんは優しいな。 そして僕はふたたび眠りについた。

ともだちにシェアしよう!