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第23話
目を覚ますと太陽が真上に来た頃だった。
お腹すいた…
ちょうどお昼の時間帯だから
食堂が開いているだろう。
ベッドから降りると
少し腰が楽になっていた。
なんとか歩けそう。
念のため、使用人の服に着替える。
あれ?首に何か…
違和感を覚えて鏡を見ると
首に包帯が巻かれていた。
斎田さんかなぁ?
結構、仰々しく巻かれている。
もしかしたらとても痛々しい感じになっているのかもしれない。
そんなに痛くはないけど
手を添えるとやはりズキズキはする。
今日は噛まれないといいな。
僕、何かしちゃったんだろうか?
首を捻るけどイマイチ思い当たることがない。
食堂に行くと、初日に会った青年がいた。
「1人?」
「あ、はい」
「じゃあ一緒に食べようよ。
俺も来たばかりだから、配膳受け取ったらここにおいでよ」
青年が人懐っこい笑みを浮かべて
隣の空席を叩く。
「じゃあ、お邪魔します」
僕はそう言って昼食を取りに行く。
今日のご飯も美味しそう。
青年の隣に座ると「いただきます」と、
青年が手を合わせた。
待たせてしまったのかな、申し訳ないなと思いつつ僕も手を合わせる。
「そういえば、名前決まった?」
「はい。翡翠のスイです。
そういえば、貴方の名前は…」
「言ってなかったっけ?ヒカリ。
本名が桜田宗光だからヒカリだって。
結構安直だよな。スイもだけどさ」
そう言って笑った。
あれ、でもなんか聞いたことある名前…
「桜田さん…、どこかで…」
「あぁ。俺も元々は財閥の次男だったんだ。
ここには度々、衰退した財閥とか貴族の長男以外の息子とか娘が雇われるんだよ。
俺、ここに来るまで男娼だったんだ」
「僕もです」
「やっぱりな。なんか教養がありそうだと思った。最初から使用人として来る人は、学校とかに行けない家庭の子が多いから」
ヒカリさんも娼館から買われた人だったんだ…
ってことは、今の僕がしてるようなことを
ヒカリさんもしてたんだろうか…?
なんだか少し、胸が苦しくなる。
なんでだろう。
僕だけがしてると思った仕事が
実は代わりの効く仕事だったからだろうか。
「俺こう見えて数年前はそこそこ可愛かったから人気あったんだぜ?
ここで買われてからはご無沙汰だけどな。
でも、こっちの方がよっぽど良いよ。
男娼を買うようなオヤジに、ろくな性癖のやつなんかいやしない。
とんでもないことされたりもしたしな」
「そ、そうなんですか…」
1日もお店に出ることがなく
主様に買われた僕は幸せだったのかも…
でも、ここに来てからはしてないってこと?
「どうした?」
「あの、僕、ここに来てから
主様にご奉仕をしてるんですけど…
ヒカリさんはそういうのは…」
「えっ…?俺はないよ!
じゃあスイは相当好みだったのかな?
旦那様がそういうことしてるなんて噂
聞いたことなかったけどな」
それから、ヒカリさんは様々なご奉仕の仕方を教えてくれた。
受けが良かったものとか、楽に切り抜ける方法とか…
確かに娼館に連れてこられた初日に、主人から教えられたような気もする話もあった。
けれども、全く経験のない僕にとっては
だいぶキャパオーバーな話で
相槌を打つので精一杯だった。
だけれど、ちゃんと主様を満足させられたら
きっとご機嫌を損ねたり
噛まれたりすることはないはず…
僕はなんとか聞ける範囲で
ヒカリさんのテクニックを学ぶことにした。
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