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第24話

「時間だから」と言って仕事に戻って行ったヒカリさんを見送り 僕は夜までどうしようと悩む。 ヒカリさんや他の使用人が働いている中、 僕だけが部屋でゆっくりするのも悪い気がして 僕はまた手紙の仕分けをした部屋に向かった。 恐る恐るドアを開けると 斎田さんが山盛りの手紙を見て 顎に手を当てているところだった。 僕の気配に気づいたのか 斎田さんが振り返る。 「スイさん!?もう大丈夫なのですか?」 「あ、はい。だいぶ休まりました。 手紙…、増えてますね」 「え、ええ。どうしたものかと…」 「僕、夜までやりますよ?」 「よろしいのですか?」 「はい。仕分けなら、体に響かないので」 「それでは…、少し心苦しいですが お任せいたします。 くれぐれも夜の時間に遅れぬようにお願いしますね」 「はい!」 「…、遅れると旦那様の機嫌を損ねかねないので」 「ひっ…、厳守します!」 「それでは」 力強く頷いた僕を見て、 斎田さんは表情を緩めた。 もしかしたら、主様の機嫌が悪いと 斎田さん達にも影響があるのかも… 皆さんのためにも僕が頑張らなきゃ。 ヒカリさんにも色々聞いたし、 実践できるといいな。 そう思いつつ、目の前の山に手を伸ばす。 本当にここにはたくさん手紙が届く。 手紙の宛先から、主様が東堂さんだと言うことがわかる。 僕が知ってる範囲の東堂というと… あの東堂財閥なんだけど… まさかね。 僕みたいなのを買うのがそんな 世界にも名を轟かせている財閥なわけがない。 僕は社交会に全然参加してないから 超有名なところか 桜田家みたいに実家と取引があった会社しか わからない。 今更、知ったところで何にもならないかもしれないけど、少しでも仕事に役立てられたらいいな。 黙々と仕分けをしていると 部屋が暗いことに気づいた。 もう、こんな時間か。 電気をつけてもいいけど そろそろ夜の支度をしなきゃな。 区切りのいいところで手紙を片付け、 夕飯を食べてから お風呂に入って支度を整える。 首の包帯をとってみたら それはそれは大きな青たんが出来ていた。 うわぁ…、グロテスク… しかもかさぶたも出来てる。 この上から噛まれたらと思うと 震えてしまう。 今日は怒らせないぞ。 部屋を出ようとしたら斎田さんが来た。 「やっぱり、そのままでしたか。 包帯、巻き直しますよ?」 「僕、不器用で… お願いしてもいいですか?」 斎田さんのお言葉に甘えて巻いてもらう。 包帯があれば、また首を噛まれることは防げそうだ。 それにしても、斎田さんの手際がいい。 きっと器用なんだろうな。 鏡越しに斎田さんの手元を見ていると 「そんなに見られると流石に緊張しますね」と 笑われた。 「すみません。あまりに綺麗に巻かれてくので、つい見てしまいました」 「ふふっ。昔は旦那様もよく怪我をしていたので、だいぶ鍛えられました」 「主様が!?」 「ええ。幼少期はかなりやんちゃでしたので」 「み、見えない…」 「私から聞いたことは内緒にしてください。 暴れると手がつけられないんです」 「わ、分かりました」 そんな風には見えないけど主様は もしかしたら案外粗野なのかな… 「よし」と斎田さんが言って 巻き終わったことを確認する。 これなら噛まれなさそう! 「ありがとうございます」と頭を下げて 僕は主様の部屋に向かった。

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