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第30話

「学者崩れ、少しばかりスイにお説教をしなくてはならないので、今日のところは帰ってくれ」 「学者崩れ!?」 「帰れ」 「もう…、わかったよ。 また明日来るから。 言っとくけど、東堂がちゃんと 飼い慣らしてないのが悪いからね」 「…あぁ。私もいたく反省している」 「スイちゃんは貴重な存在なんだから 大切に扱ってよね」 「分かっている。斎田にも再三言われた」 その白衣の男性はぶつぶつ言いながら帰った。 目だけでその人を見送った後、 主様はくるりとこちらに振り返った。 「あの…、すみません。 僕、じょうずにできなくて…」 「はぁ…」 主様は深くため息をついた。 思わず肩が跳ねる。 「次から気をつけます」 「次などない。 あいつは2度とこの部屋には呼ばない。 私以外の誰にも2度とあんなことはしないでくれ」 主様は暗い顔をして ガウン越しに僕を抱きしめた。 「申し訳ございません。 僕、うまくご奉仕ができなくて…」 「違う。スイの奉仕に不満はない。 ただ、私以外にしないでくれ」 「僕は…、こう言うことをするために 買われたわけではないのですか?」 「全く違う…、とは言い切れないが 私のものに他人が触れるのは許せないたちなんだ」 「分かりました」 僕は主様のもの… 主様以外にご奉仕をしなくて良いのは 大変ありがたい。 主様のモノを咥えたり、 挿れられたりすることに抵抗はないけど 他の人と…、と考えると嫌だ思ってしまう。 娼館で働く前に買われたのが 本当に奇跡のようだ。 主様に嫌われないようにしなきゃ。 そう思って、今日もまた仕切り直して ご奉仕しようとしたら 「今日はいい」と言われて 抱きしめられたまま布団に入る。 前までの僕なら喜んで受け入れたのに 「しなくていい」と言われると 少しガッカリしてしまう。 僕のお仕事なのに… 最近はお昼もあまり仕事をしてないから 貴重な僕のお仕事なのに… 僕はそのうち捨てられてしまうのでは? という焦りまで生まれる。 明日はちゃんとしなきゃと 気を引き締めた …、けど 温かな体温と主様の背中をポンポンと 叩く手が心地よくて落ちそうになる。 あれ?主様、お説教と言っていたのに このままじゃ寝てしまいそう… なんとか起きていようとしたけども うっかり僕は眠りについていた。

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