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第33話

※東堂啓 視点 スイがぐったりとして意識を失った後、 すぐ横に立っていた斎田がため息を吐いた。 「我が主ながら失望しました。 幼少期から旦那様に仕えておりますが、私ごときに嫉妬することないでしょうに」 「…」 確かに私と斎田では身分は違うが 私の前では震えているスイが 斎田には気を許しているように見えるし 私には頼ろうとしないのに 斎田には甘え切っているように見える。 それに、滅多に人に深入りしない斎田が 妙に気にかけているのも気になる。 それでそう説明したが 「ですから、スイさんは私を親のようなものだと思っているだけかと」 と、ため息交じりに返された。 そうはいっても血はつながっていないではないか。 納得がいかず不貞腐れていると スイの体をふき終わり、しっかりと布団まで掛けた斎田がこちらに向き直った。 「それと、明日、長嶺様がご令嬢といらっしゃいます」 「断れと言ったはずだが」 「ええ。丁重にお断りしました。 が、お気遣いなくとお断りをお断りされました」 「…、分かった」 「それでは、よろしくお願いいたします。 失礼します」 そう言って斎田は足早に退室した。 長嶺の社長は私の父の友人だ。 そして、なぜか私を気に入り、自分の娘と結婚させようとしてくる。 先月までの私は特に結婚に興味がなく、 ご令嬢が乗り気なら時を見て婚約しても いいと考えていたが… 「シーマ族は男女の区別がなく繁殖ができる」という帯刀の言葉が妙に耳についている。 子孫が残せるのなら、私の父もスイを認めてくれるだろう。 ただ、現状ではスイは嫁ぐことを了承はしないだろう。 まあ、主人からの命令だと言えば首を縦に振るだろうが、先の事を考えるとスイの意思で頷かせたい。 翌朝、目を覚まして帰ろうとするスイを引き留めて、ギリギリまで惰眠をむさぼる。 長嶺は遠いところからくるので、今日は泊っていくだろう。 そうなると、今夜はスイを呼ぶことが出来ない。 客室とここは離れているが、あのご令嬢のことだから道に迷ったと言って、突撃しかねない。 大切に育てられたご令嬢だ。 私とスイがしているところを見たら泡を吹いて倒れるかもしれない。 気が重くなり、私は再びため息を吐いて 海外から帰っているだろう両親の部屋に向かった。

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