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第38話

目が覚めると部屋が真っ暗で驚く。 慌てて電気をつけると ギリギリ食堂が開いてる時間だった。 少し迷ったけど、夕食をいただくことにする。 食堂内にはそれでも忙しい持ち場の人が数人、夕食をとっていた。 「スイさん、こちらにいらっしゃったのですね。今日は随分と遅いようで…」 斎田さんがどうやら僕を探していたようだ。 部屋を真っ暗にして寝てたのが申し訳ない。 「あ、すみません。遅くなってしまって」 「いえ。それぞれ自由に食事をとって良いことになっていますので。 それよりも、本日の準備はどうなさいますか?」 「あ…、えっと…、今回はお願いします」 準備、というのは主様のお部屋に行く準備のことで、自室があった頃はほぼ自分で支度をして向かっていた。 が、今日からは主様のお部屋が自室のようになってしまったので、お風呂場の位置や使い方がわからない。 それに、女中さんに聞きたいこともある。 「了解しました。お部屋に女中を向かわせます」 「すみません…、お願いします」 「…、顔色がよろしくないようですが…、大丈夫ですか?」 「大丈夫ですよ!…、実はさっきまで寝ていたので、もしかしたらそのせいかもしれないです」 「そうですか。旦那様からも、スイさんが無理されているようなら仕事を減らせと言われておりますので、遠慮なく言ってください」 「ありがとうございます」 僕が笑顔を作ってお礼を述べると 斎田さんはまだ少し心配そうな顔をして 食堂を後にした。 斎田さんは、主様のお世話をしているからか 顔色や体調の変化にとても敏感だ。 僕の体調はすこぶるいいのだけれど、 どうしてもあの手紙を思い出すと 気持ちが暗くなってしまう。 それが顔色に出てしまったのだろうか。 食事を終え、主様のお部屋に向かう。 女中さんにお願いしなきゃいけないことがある。 部屋の扉を開けると、いつもの女中さんが3人ほど待機していた。 「ひさびさですね、スイさん。また私どもにお手伝いをさせていただけるなんて嬉しいです」 「すみません、お願いしてしまって」 「いえいえ。私どもの本業はこちらなので、とても嬉しいですよ。さ、こちらへ」 嫌な顔ひとつせずに女中さんは僕を浴室へと案内する。 主様の部屋の近くにも、やはり浴室があった。 別に歩いても構わないけど、使用人用の浴室までは少し遠いので、ありがたい。 「あのっ、いつもお風呂上がりに着る服なんですけど…、青っぽいのってありますか?」 恥ずかしいので洗うのは自分でします!と言ったため、脱衣所から出ようとする女中さんに意を決して訊いた。 女中さんは意外そうな顔を浮かべたが、 「主様はスイさんのためにと、むこう1年分の下着を購入されております。ので、数着はあるかと思います」 と答えてくれた。 「あ!一緒に探しますか?」 と、言われたので 「いいんですか?」とお言葉に甘えることにした。 っていうか1年分ってまさか400着近く購入したってことなのかな。 3〜4着あれば回して着れるのに… 僕のために、わざわざ? でも、主様がそういう嗜好なら 僕が口を出すわけにもいかない。 むしろ、1年は僕を離す気がなかった、ということに喜ぶべきだ。 今はどう思っていらっしゃるか分からないけど。

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