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第40話

先にお部屋で待つことがなかったから 主様が来るまでどうしていいか分からず ベッドに座ったり、立ったりを繰り返す。 いっそ、読書でもしようかと 本棚に目をうつすも お手紙が挟まったあの本の背表紙が 嫌に目についてしまう。 そうこうしているうちに部屋のドアが開き 主様と目が合った。 主様は驚いた顔をした後に「そういえば、ここがスイの部屋はなったんだったな」と笑った。 長い足でズンズンと僕の目の前まで来ると 僕を腕の中に収めた。 「部屋にスイがいるというのは、素晴らしいことだ」と呟く。 熱烈な歓迎に僕は顔が熱くなる。 なんて恥ずかしいことを言うんだろう。 「これは女中が選んだのか?」 と、僕の着ているものの肩紐を摘んで主様が言った。 「いえ。女中さんに頼んで、僕が選びました」 「やはりな。今までと随分と趣向が違うなと思ったところだ」 「似合っていないですよね」 「いや。全てスイのことを考えて買ったものだから似合わないわけがない。スイはこういうのが好きなのか?」 「えっと…、それは…、その、主様がこういう色がお好きかと思って」 なんかとんでもないことを言われた気がするけど、僕はこれを選んだ理由を聞かれて返事に窮した。 「私が?…、最近はそうだな…、青よりもスイの目のような翡翠色が好きかもしれないな」 「ええ!?あ…」 そういえば、やたらと薄い緑色のものが多かった気がする。 僕の目の色だったのか… 「だから、もしも私の好みに合わせようとしてくれたなら、緑を選ぶといい。 他に外出用の服も買ってあるから、今度私が遠出する時は着いてきてもらえると助かる」 「へ!?」 「海外も、スイのような賢い子が見て回れば、とてもいい刺激になるだろう」 「で、ですが、僕は外国語の会話はできません」 「取引先との会話は私がする。いざとなれば、スイも筆談をすればいい」 「な、なるほど」 僕が海外に… それは願っても見ないことだ。 僕がこのお屋敷に来てから、主様は全く遠出をしていないようだが、斎田さんはかなり珍しいと言っていた。 そのくらい、主様は自分の足で海外に向かったり、外交に積極的だと聞いた。 そんな大切な場面に僕が居合わせてもいいのだろうか… 「海外となると連泊になるから、隣にスイがいるだけで癒しになるだろうからな」 「そんな…」 と言いかけて、腑に落ちた。 僕がついていけば、夜のお供も出来る。 どんな目的であろうと、僕に価値があると思ってもらえるのは嬉しい。 たとえそれが、身体目的であっても。 だから、ショックを受けるなんて傲慢だ。 「嫌か?」 「いえ!主様がお望みなら、僕はどこへでも行きます」 「そうか。スイにはもっと自分のしたいことを言って欲しいが、今はこれで良しとしよう」 「?」 主様が僕の髪を撫でながら、ベッドへ誘導する。 慣れてしまったこの行為も、今は僕だけだと思うと少し嬉しい反面、 ルリコさんには出来ないから身代わりなのだと思うと胸が痛む。 でも、僕が傷つく分には構わないんだ… 主様が本当の意味で幸せになるといいな。 その時、僕はどこでどうしているんだろう。

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