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第41話※微

※東堂啓 視点 スイが私の好みに合わせて、着る物を選んだかと思うと、思わず口角が上がる。 が、どことなくスイの表情に元気がない。 この下着は紐という紐にビジューがあしらわれていて このまま転がったら痛そうだから いつもより早めに脱がせようとする。 「僕がこの色着てるの、嫌ですか?」 と、不安そうな表情でスイが私を見上げる。 「いや。紐が痛いかと思ったんだが」 「え?あ、そ、そうですね」 スイが焦ったように脱ごうとするが 複雑な構造だからか手間取っている。 その慌てようが面白くて私は笑いながら手伝う。 全てを脱いでからスイは何かに気づき、顔を赤くして布団を被った。 「どうした?」と聞きながら布団を捲ると 「電気…、まだ消してなかったです」 と、布団から顔だけを出して恥ずかしがる。 普段はゆっくり脱がせるのでその間に照明を落としたりしていたのだが 今日は順序が逆になった。 とはいえ、スイが先に寝てしまった日は 私が全身を洗ったりしているので スイの裸は見慣れているのだが それを言ったらスイは気絶するだろうか。 「よく見せて欲しい」 「うぅ…」 スイの目をじっと見ていると その目を潤ませながら ゆっくりと首まで引き上げた布団をはぐ。 真っ白で滑らかな肌が現れる。 しかし、大事なところは桃色に色づいていて、まだ子供のような体格なのに扇情的だ。 「そ、そんなに見ないでください」 スイは首まで真っ赤にして目を瞑る。 「体を見られたくないなら私の目を見れば良い」 そう言うと、スイはゆっくりと目を開ける。 翡翠の目と見つめ合う。 「目を見るのも恥ずかしいのですが…」 目尻に涙が浮かんでいる。 恥ずかしくて泣く者は初めてだ。 それでも、私から目を逸らさないスイがいじらしい。 私の方が耐えきれなくなり、スイを抱きしめる。 ガチガチに緊張していた体が、私の視線から外れたせいか、少し緩むのを感じる。 「スイは本当に可愛いな」 「それは…、ルリコ…様よりも?」 「…? 何故、長嶺の令嬢が出てくる?」 「い、いえ!なんでもありません」 「スイ?」 不思議に思い、私は腕を緩めてスイの顔を覗き見る。 視線が外れたはずなのに、スイの目はまだ潤んでいた。 眼のきわに指を添わすと、ポロリと涙が溢れた。 「なんでも…ないので、続きをしてください」 積極的なのは大変嬉しいが、今はそれよりもスイが何故泣いているのかが気になる。 「ご令嬢に惚れたのか?」 確かに瑠璃子は黙っていれば美しいとは思うが、スイが好きだと言うのなら、有る事無い事を吹き込んで、興味を逸らさなくてはならない。 「僕がですか!?全然違います!!る、ルリコ様はやっぱり関係ないです!気にしないでください」 「いや、しかし…」 関係ない、なんて顔じゃないだろう。 スイが惚れたわけじゃないなら、なんだ? 私が思案していると、私の下にいるスイがゴソゴソと私の下半身を探る。 だから、積極的なのは嬉しいが今はそれどころでは… と、理性で押し留めようとしたが、涙目で夢中で私のものを咥えるスイを見ていたら我慢ができなかった。 いつもよりは手加減したつもりだが、 しっかりと時間をかけて抱き潰した。 うとうととするスイを抱き上げて、風呂に入れようとしたら、スイが私の襟元を弱く掴んだ。 「主様は…、ルリコ様がお好きなんですか」と、眠る一歩手前の顔で呟く。 「は?いや、それは…」 と、弁明しようとしたところでスイが寝落ちた。 誤解をされていたらしい。 しかも、スイがそれを気にしているようだ。 ご令嬢の気が変わるまで待とうかと思っていたが、なるべく早くに婚約破棄の件は、話をつけるべきなのかもしれないな。

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