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第46話

主様が帰られたのはそれから3日後だった。 僕は変わらず、出来る仕事は なるべくさせてもらって 厨房が忙しくない日は修行したり いそいそと動きまわっていた。 岩崎さんからは何度か 「少し休まれては?」と言われたが 西条さんからの提案の件もあり、 使用人の仕事はなるべく全て習得したかったので、聞く耳を持たなかった。 3日目の晩、夜の仕事がないので 布団に入ってぼーっとしていた。 とてつもなく広いベットの端に なるべく小さくなって使わせてもらっていた。 ドアがガチャリと開いた。 岩崎さんや女中さんはノックをするので 僕は少し驚いて身を起こす。 久々に見る主様の姿がそこにあった。 僕は飛び起きて主人様の元は向かう。 「お帰りなさい!その、今日帰られるとは知らなくて…、すみません、お出迎えもせず…」 「構わない。言わなかったのは私だからな。 久々だな、スイ。ただいま」 僕は胸がいっぱいになって、思わず抱きついた。 主様は笑って抱き返してくれた。 「熱烈な歓迎だな。いい子にしてたか?」 「いい子…、かは分かりませんけど、 真面目にお仕事はしてました」 「岩崎が意外と頑固だと嘆いていた。 …、スイ、少し痩せたか?」 「岩崎さんにはご迷惑をかけたかもしれません…。3日で痩せるものですか?」 「どれ」 主様はそういうと、僕を抱き上げた。 途端に足が地から離れる。 「わっ!?」急なことにびっくりして 僕は思わず足をバタバタさせた。 「やはり軽い気がするな。顔もやつれている」 抱き上げられたせいで、近くなった距離で顔を見られる。 相変わらず、整われている。 「主様も少しお疲れのようです」 「長旅だったからな。スイもいなかった」 僕を抱えたまま、ベッドに腰掛けた主様は さらに力を込めて僕の腹に顔を埋めた。 恐る恐る、その後頭部を撫でると 主人様は笑い声を漏らした。 「そういえば、西条さんがいらっしゃいました」 と、伝えるとガバッと顔を上げた。 もう少し、撫でていたかった僕は 少し残念な思いで手を下ろした。 「西条が?何も聞いていないが…。 何もされなかったか?」 「え、えっと、はい。一緒にお茶を飲んだくらいです」 「私ですら会えてなかったのに…。何の話をしたんだ?」 「え?いや…、世間話です」 「西条が世間話?」 「は、はい」 「スイ」 あんなに穏やかに話していた主様の声に 急に圧がかかる。 「…、言いたくないです」 説明するのもややこしいし、 キチンと説明できたとして 結婚を嫌がってるなんて知れたら それこそ僕は追い出される。 「西条に話せて、私に話せないことか」 「…」 黙秘を続けていると、主様はため息をついて 僕の手首を掴みベッドに縫い付けた。

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