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第50話
※東堂啓視点
あんなに「他の人と結婚しないで」と
懇願していたのに
いざ、長嶺との婚約を断り、
スイにプロポーズをすると
スイは青ざめた表情になった。
帯刀を呼び、スイにとって
ネックになっているだろう
男性同士じゃないというところを
説明してもらったが、
依然としてスイの表情は堅かった。
いざ、結婚となったら
嫌になってしまったのだろうか?
不安を覚えつつも
顔色が悪いスイに休むように伝え、
書斎で仕事をしていると電話が鳴った。
「ちょっと!!啓!!あなた、例の人にプロポーズしたんですって!?聞いてないわよ!!」
と半ば叫ぶような母親の第一声にため息が出る。
帯刀が連絡したのだろう。
全く、余計なことを…
「したけど、本人は困惑してる。
お母様達への紹介はまだ先にさせて欲しい」
「それは別にいいのよ。最近、長嶺さんの件で日本に行ってばかりだったから、こっちでやることが山ほどあるの。
でもね、披露会をしなくてはいけないでしょう?
そうなるとご令嬢じゃない方は教養をつけなくてはならないでしょう?
講師を手配したからね」
「…、え?」
「明日から講師の方々が時間ごとにそっちに向かうから。スケジュールは斎田さんに連絡しておくわね。
それじゃ、お幸せに」
「少しま…」
少し待ってください、と言おうとしたが
せっかちな母親は言うことだけ言って
電話を切った。
急に講師とか言われたって
スイがあんな調子では…
頭を痛めつつ、スイがある寝室のドアを開ける。
スイは帯刀が置いていったシーマ族の資料を読んでいるところだった。
やはり、顔色は良くない。
「嫌だったら断ってもいいのだが」と前置きをして、講師の話を伝える。
するとスイは「身に余りますが、主様のお役に立てるなら精一杯頑張ります」と
思ったよりも乗り気だった。
心なしか、少し生き生きした気もする。
「体調が悪いなら無理しないでくれ」
と言ったが、
「いえ。むしろ仕事がなくなって、身を持て余していたので。お勉強は好きですし、とても楽しみです」と言う。
スイがそれでいいというなら良いか…
それにしても、披露会か…
スイのような目立つ見た目の婚約者を
紹介するとなれば
かなり注目されるだろう。スイが。
もちろん、スイの心労もあるが
スイを外に出したくないと言う
私のわがままもある。
外を知らないスイが、
どんどん外の世界を知って
自分の元から飛び立ってしまうのではないかと
かなり不安だ。
ただでさえ、賢くて知的好奇心の高いスイだ。
やっぱり結婚して東堂に縛られるのは嫌だと言われたら、私は手を離すことができるだろうか。
いや、スイを繋ぎ止めることができるだろうか。
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