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第51話

※スイ視点 「明日から講師がくる」と聞いて 僕は少しだけ気が楽になった。 今の僕には、子供を産むこともできないから 婚約者としての価値が少しもない。 せめて、婚約者としての責務くらいは 果たせるようになりたい。 それに、僕は他の財閥の子達が 身につけているような教養が少しもない。   すべきことがあることに 僕は安心する。 講師の方は朝から来てくださるみたいで 主様は初日から遅刻はまずいか…と 夜も早い時間に寝かせてくれた。 僕としては、隣に主様が来て 主人様の香りがする布団に包まれると 少し体がムズムズするのだけれど せっかく気を使ってくださったし 自分から誘うなんて、はしたない。 僕は明日から始まるお勉強のことを考えて やっと眠りにつくことができた。 翌日からの講習はとても楽しかった。 食事のマナーやダンスのマナー、 社交や音楽などで、 僕が学びたかった外国語や数学、歴史のような勉強ではなかったけど それでも主様の隣に立つためのお勉強は知らないことだらけで楽しかった。 講師の先生方も、きっちりとしてたけど たくさん褒めてくれたし 注意の時にぶったりもしない。 スケジュールは詰め詰めだけれど 使用人の仕事がないので困らない。 数日が過ぎた夜、いつも通り布団に入ると 主様が 「最近、かなり生き生きしているな。 勉強の件で、無理をするなと言いたかったが、スイが楽しそうだから止めるに止められないな」と僕の頭を撫でた。 「主様は僕を甘やかしすぎじゃないですか?」 と、僕は不服そうに言う。 心配してくれているのかもしれないけど 僕はまだ17歳だし、体力だってある。 夜のお勤めだって本当はできるのに。 「そんな顔しないでくれ。 スイが大切なんだ」 困ったように主様が僕の頭を撫でる。 「余力があるというなら、名前で呼んでほしいんだがな」 「それは…、それは難しいです」 「もし、社交会に行くことになったら勿論スイに同席してもらう。 その時に“主様”では困るだろう?」 「う…、善処します」 「呼んでみてくれ」 「ひ…、やっぱり、今日はまだ無理です!」 「そうか…。まあ、気長に待とう」 「その…、お名前で呼ぶことはまだ出来ないのですが、ご奉仕は出来ます」 「…、無理はしなくていい。明日も早いだろう」 主様は一瞬、僕を見つめて何か考えていたけれど、ふと笑って布団を僕の顎まで引き上げた。 至近距離で主様と視線が絡むと、僕は触りたくなるし、触られたくなってしまう。 「…、スイ?そんな目で見られると困る」 「…、主様はもう僕には飽きましたか?」 だってそうだとしか思えない。 17歳を過ぎても、二次性徴が来ない僕の体に飽きてしまったのだろうか。 「はぁ…。今のはスイが悪いからな。 明日起きられなくても後悔するなよ」 せっかく掛けてくれた布団を主様は剥いで 僕に馬乗りになる。 主様の獲物を狩るような視線に僕の体温が上がる。

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