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第53話※

ようやく欲しかったものが挿入ってくるころには、僕の思考はドロドロに溶けていた。 何が何だか分からないけれども 指では到底届かなかったところを 押し上げられると 思わず悲鳴のような声が漏れる。 苦しい… けど、やめてほしくない。 「やっと肉がついてきたな」 主様は嬉しそうに僕のお腹を撫でる。 きた頃はあばらが浮き出ていた体は 脂肪がついてきたからか それほど骨感が出なくなっていた。 これが筋肉になってくれれば 僕としてはありがたいんだけど。 食堂で食べるご飯は美味しいけれど 主様と食べる食事はもっとおいしくて 少しずつ食べる量が増えている。 さらには、西条さんがお茶をしにくるたび ケーキやお菓子を持ってくるので このままだと、兄や父のように まるまると肥えてしまうかもしれない。 「肉をつけすぎないようにします」 主様の上に跨りながら言う。 この体勢だと、よりお腹が目立ってしまう。 「私はもう少しあっても良いと思うが」 と、主様が僕を見上げながら言う。 上から見ても下から見ても 完璧な見た目でなんてこと言うんだろう。 僕は髪や目の色は派手だけれど 造形自体はとっても地味だと思う。 そんな僕の体型が崩れたら 見れたものじゃない。 見た目が良くて、頭も良くて、 ひいては東堂家の次期当主の主様。 この人との子供が産めたらどれほど幸せだろう。 その役目を僕に果たすことができるだろうか。 脳裏に「側近」という言葉が浮かぶ。 僕の実家でも何人かの愛人が 別宅に囲われていた。 主様は僕1人だけと子孫を残さなくては いけないわけではない。 僕としてもそれを薦めるべきだろう。 だけど、僕に触れるこの手や 僕の中にあるものが 他の人に触れるなんて嫌だ。 「スイ?辛いか?」 主様が心配そうに僕を見上げている。 こんな時にも僕の心配をしてくれるこの人を 独り占めしたいなんて… 「主様、中に欲しいです」 「っ…、ダメだ。体調を崩してしまうだろう」 「やだっ」 僕は動きを早める。 「スイ」と、主様が声と手で制しようとしてくるのに抗うように腰を動かす。 「スイっ、これ以上は本当に」 主様が珍しく余裕のない顔をしている。 かくいう僕も、筋力的にも余裕がない。 「啓さんっ、ください」 僕は絶頂しながらも、後ろを締めて懇願した。 「くっ」と短い息を漏らして主様は脱力した。 中に温かい感触が広がる。 ああ、これで孕んでしまえたらいいのに。 僕はそのまま、主様の体の上に倒れ込んだ。 少し冷静になり、なんてことをしてしまったのだろうと慌てて起きあがろうとするが 主様の腕が背中に周り、頭を撫でてくれる。 「体調を崩しても知らないからな」 と主様が笑みを含んだ声で呟く。 怒ってない…、と安心したら 僕は中のものを掻き出すのも億劫になり そのまま瞼を下ろした。

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