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第56話

社交会当日。 僕はみるみると自分が作り上げられていく様子をぽかんと見ていた。 仕立て屋さんや女中さんが変わる変わる、 僕に手を加えていく。 その度にどんどん変わっていくのがすごかった。 最終的には「これ、僕ですか?」と思わず確認してしまうほどの姿になった。 どこからどう見ても女性だ。 ただ、目や髪の色は変えられなかったので 目を引くことは確かだ。 しかも、主様のお母様もドレス作りに携わったけど、このドレスもかなり目を引く… 僕とはまだ顔を合わせてはいないけど 「東堂家の若妻となれば、それ相応のドレスにしなきゃ!」とかなり華美なものを仕立ててもらった。 僕の顔の造形は地味なのだから シンプルな作りにして欲しかった… とにかく、目立ちそうで僕は不安だ。 しかも、練習で着たドレスよりも装飾が多く、重いし、気を使うことが多い。 主様のエスコートがあるとはいえ、大丈夫だろうか。 会場に着くと既に他のご令嬢やら、財閥の人やらがいた。 主様が歩いていると、近くにいた人が挨拶をしにくる。 そして、隣にいる僕を見て、おじさま方は「私の娘をと思っていたのに。残念だ」とか 「これはこれは…、おめでとうございます」とか声をかけてくる。 一方で、若い女性達は主様を見て目をハートにした後で、僕を一瞥して睨んでくる。  「今まで、どこの社交会でも見たことがないわ。何処の馬の骨?」とか「何あの髪の色!?日本人じゃ無いの?」とか、あからさまに攻撃的だ。 とにかく、容姿を否定されている。 確かにご令嬢達はとても美人だし、重そうなドレスを着ているのに立ち振る舞いが美しい。 でも、ルリコ様の方がずっと綺麗だし、僕はあの時ほど、胸が苦しくなったりはしなかった。 ただ、やっぱり僕のような容姿の人が 主様の隣に立ってていいのだろうか とは思う。 しかも今は、お化粧やセットのおかげで 女性に見えているだけだし。 これが男でした、となったらかなりバッシングを受けそうだ。 主様は僕をエスコートしつつも 人混みをスイスイと抜けて、 挨拶するべき人に挨拶をして回る。 僕もその度に「初めまして」とか「お世話になっております」とか一言挨拶をする。 やっぱりとても緊張する。 これで規模が小さいというのだから 大きな社交会なんて行ったら 今の僕では卒倒してしまうかもしれない。

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