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第63話

血が出ているところ、皮がめくれているところ、何箇所あるかも確認できないくらい 傷があるところをゆっくりと消毒していく。 とても丁寧にしてもらっているのに 痛みはあってその度に小さく声を漏らしてしまう。 せっかく、していただいてるのに 痛がってしまうのが申し訳ない。 全て消毒し終えたのか、 主様は綿の包帯を丁寧に巻き、 僕の足の甲に唇を落とした。 「あ、主様!?そんなところ…、汚っ」 「スイに汚いところなどない。 最後まで痛いとは言わなかったな」 主様は悲しそうな顔をして 僕の頭を撫でた。 「い、痛くなんてなかったです! ありがとうございました」 と言うと「偉いけどスイは嘘つきだ」と 僕を抱きしめてくれた。 否定したかったけど 僕も疲れていたのか 主様が僕の背中をトントンするリズムに だんだん眠たくなってくる。 「今日はもう寝て良い。 スイはよがると暴れるから傷に響くと悪い」 「暴れてなんかないです! 主様がしたいのならご一緒します」 僕は少しムッとして言い返した。 まるで僕が淫乱みたいな言い草だ。 主様が「嫌」と言ってもいじったりするから、いけないのに。 「私も今日は疲れたから大丈夫だ。 それに、私だけがしたいと思ってては意味がないからな」 どういうことだろう?と、思ったけれど 聞き返す間もなく瞼が降りてくる。 本当に今日は色々な経験ができた。 しっかりと見聞きしたことを復習しなくては。      目が覚めると少し部屋の中が明るい。 どうやら早朝のようだ。 しっかりとドレスは脱がされていた。 あれ?ドレスはどこにいったんだろう。 ただ、主様は昨日の服のまま寝ている。 僕の手はしっかりとそれを握っていた。 僕が主様(の服)に縋り付いたまま寝たから こうなっているのだろう。 申し訳ない… 僕は慌てて起き上がった。 その振動で目が覚めたのか主人様が「スイ?」と掠れた声を出した。 「主様、申し訳ございません。 僕が服を掴んだまま寝たから着替えられなかったんですよね!? どうしよう…、シワになったりしたら!」 と、僕は慌てたが 「別にもう着ないから平気だ」と言われた。 やはりシワをつけてしまった服は 二度と着られないらしいと、僕は落ち込む。 素敵なお召し物なのに、ダメにしてしまった。 「スイ?」 「ごめんなさい。そのスーツも買い取っ」 「もともと、一度社交会で来た服は、次は着ないことにしているんだ。 スイのせいじゃ無い。 思う存分、握りしめて構わないぞ」 と、主様は意地悪な顔で笑った。 こんな高そうな服を一度きりで着なくなるなんて…、もったいない… 「もう大丈夫です」 と、僕は主様の腕の中から出ようとするが 「私がもう少しスイに触れていたいんだ」と 連れ戻された。 って言うか、僕全裸なんですけど!? 確かに、主様に縋り付いてたらドレスを脱がすのでやっとかもしれないけれど、 こんなかっちりしたスーツを着た人の横で 全裸で寝るの嫌なんですけど! と、抵抗したが、主様の有無を言わさない拘束に僕は屈するしかなかった。

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