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2:才能の発覚とトラウマの発症①
いつ頃から霊が視えるようになったのか、礼二郎はよく覚えていない。
ただ母が言うには、幼い頃から何も無いところを指さしたり、よく壁に向かって話しかけたりしていたらしい。
その頃はまだ霊というもの自体がよく分かっておらず、特に怖いという気持ちはなかった。
しかし、霊――というか、得体の知れぬ不気味なもの――が苦手になった決定的な出来事は覚えている。
まだ礼二郎が小学校低学年だったある夜、五つ歳の離れた兄の優一郎 が、二人での留守番中に映画を観ようと誘ってきたのだ。
『えーっおにいちゃん、この映画におとーさんとおかーさんが一緒に出てるのぉ!?』
『ふふ、正確には違うよ。お母さんが出ていて、お父さんがこの映画を撮ったんだ』
『わぁ~い! たのしみぃ~!』
その時、まだ幼い礼二郎は知らなかった。
父はB級ホラーの映画監督で、母はお化け役が得意な舞台系女優だということを。
いつも優しくて穏やかな兄は、小学生の頃からホラー映画が大好きだということを。
そして──
『んぎゃあァァァ!!! なにこれ怖いぃぃ!!!!!』
見事、トラウマになった。そしてその時から、礼二郎には死んだ人間が時々視えるようになった。
最初は自分の頭がおかしくなったのかと思い親に相談したのち病院へ連れて行ってもらい、あらゆる検査をしたが脳は正常だった。
次に色んな神社仏閣その他諸々に相談に行った結果、礼二郎は軽い霊媒体質だと判明した。
──幽霊は、とにかく怖い。
家族は礼二郎が霊が視えることを信じてくれるが、心配するどころか
『いいなぁ礼二郎、霊が視えるなんて!』
『演技の参考になりそうで羨ましいわ……』
『何か面白い霊とかいたら、いつでもネタ提供してくれよな!』
――などと羨ましがられるばかりで、礼二郎は巨乳で悩んでいる女の子の気持ちに死ぬほど共感した。
他人が聞いたら自慢にしか聞こえない悩みってあるよね、と。
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