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礼二郎は高校を卒業し、県外の大学に進学すると同時に一人暮らしを始めた。
極度の怖がりなくせに何故実家を出たのかというと、実家は映画の小道具だかなんだか知らないが、自分の部屋以外はホラーグッズだらけだったからだ。
── 実家では常に心が休まらない。
霊媒体質と言っても、礼二郎はいつでも意識したら霊が視えるわけではなかった。
偶々近くにいた霊が時々ドッキリのように急に姿を現し、それがうっかり視えるだけだ。映画のように憑依されたり、傷付けられたことは一度もない。
しかしその中途半端な感じが、逆に怖くて堪らないのだった。
いっそのことS級の霊媒体質だったら、高名な霊能者のところにでも弟子入りして霊を祓えるようになったり、『美形すぎる霊能者』としてチヤホヤされて生きる道もあったのに――、と礼二郎は嘆いた。
ちなみにそれは未だに軽い厨二病を患っている父(48)と兄(24)の案で、母は礼二郎にアイドルとして芸能界入りして欲しい派だった。
しかしアイドルはバラエティ番組で心霊ドッキリをされる可能性が高いため、礼二郎は断固拒否している。
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