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②
「あー、死ぬかと思った……。柴君、今朝から二度も助けてくれてどうもありがとう。まさかお隣さんだったとは、だから俺の名前知ってたの?」
「うん。――それに槐君、違う学部だけど入学当初から目立ってたし」
「え、そうなのか?」
「うん」
礼二郎は、今度はまじまじと柴を観察した。少し長めの黒髪とメガネで隠されているが、やはり顔が整っている。それに今朝は気付かなかったが、黒い宝石のようなピアスと数珠のブレスレットをしていた。
家にいるのにオシャレかよ! と心の中で軽くツッコんだ。
「? どうしたの」
礼二郎のジロジロと値踏みするような視線に気付いたのか、柴が尋ねた。
「あ、ごめん。柴君イケメンだなって思って……」
「え、槐君の方がイケメンだよ?」
「!? あ、ありがとう……」
自分でも心からそう思っているが、最近は友人達に『ハイハイ、イケメンイケメン』と軽く流されまくっているせいで、久々にマジトーンで褒められて礼二郎は照れた。
「……でも」
「む?」
(で、でも何だ? イケメン調子乗んなよって!? でも事実だし、柴君だって俺の事イケメンって言ったじゃん!!!)
「可愛いな、と思うよ」
「へ?」
「泣いてるとこばっか見てるからかな」
柴はクスクス笑いながらそう言い、礼二郎はそんな柴をぽかんと見つめた。
たしかにさっき助けを求めて目の前でボロボロ泣いてしまったが、それ以外に最近泣いた事なんて……
「……もしかして、今朝泣いたところも、見られてた?」
「うん」
「うわ、恥ずかし……」
恥ずかしさはあるものの、礼二郎は昔からわりと躊躇わずに泣く。男のくせに、などと思ったことはあまりない。
何故なら幽霊もGも当たり前に怖いので、怖いものを素直に怖がることを別に恥とは思って無いからだ。
「今朝、どうして泣いてたの?」
「え?」
「何か、ヘンなものを見たとか?」
「へ、変なものって……」
正直に言えるわけがない。走行中の電車の車窓に、血まみれの女性の霊が視えたんだ──なんて。しかもほぼ初対面の相手に。
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