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8:親切心と下心①
「じゃ、明日もよろしく。また何かあったらいつでも連絡して」
「うん。――あ、あの、柴君」
「何?」
「今更だけど、どうして俺にこんなに親切にしてくれるんだ……?」
ナンパの撃退、虫退治まではまだ分かる。(前者はただのいい人で、後者は礼二郎が頼んだからだ)しかし同じ男に対して『守らせて欲しい』なんて言うのは、少し真意が分からない。
──単なる親切にしては、度が過ぎているような……。
「………」
「あ、いやっ、迷惑とかそういうことじゃなくて!」
「槐君が、人に優しくしたいと思うのはどんな時?」
逆に質問されて、礼二郎はキョトンとした。
(俺が人に優しくしたいと思うのは……えっと……目の前で困っている人がいるときだな。それ以外ナイ)
「……なるほど、そういうことか……!」
礼二郎は閃いた。
「?」
つまり柴は礼二郎が痴漢が怖くて1人で電車に乗れないと思い込んでいて、それでこんなに優しくしてくれるのだ、と礼二郎は解釈した。
要するに彼は、失礼だが少々お節介な性格なのだ、と。
末っ子で甘やかされて育った礼二郎は、お節介を焼かれるのは苦痛ではない。むしろありがたいので、柴のおせっかいを素直に受け入れることにした。
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