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9:右隣の住人①
(許さない……あの男だけは、絶対に許さない……)
「う~ん……ゆるさなぃ……って、誰をぉ……?」
礼二郎は突然脳内に響いてきた女性の恨みがましい声で目が覚めた。スマホのアラームはまだ鳴っておらず、予定していた起床時間より一時間も早い。
「え? なんだ今の。夢……?」
礼二郎は女性に恨まれるようなことをした覚えは一度もない(と思う)。逆はまあまああるが、引きずる性格ではない。
(気の所為、か……?)
気のせいにしないと怖すぎるので、そういうことにした。
今日の講義は2コマ目からなのでかなり余裕がある。二度寝をする気にもならなかったので、少々気合いの入った朝食を作って柴にご馳走しようと思い至った。
一応昨日の礼のつもりだ。(普通は夕食を奢ったりするのだろうが、礼二郎はその辺りが少しズレている)
Lineで柴を朝食に招待すると、すぐに『おはよう、お誘いありがとう、一時間後に行くね』と返事があった。
礼二郎は初めての来客にうきうきしながらわかめと豆腐の味噌汁を作り、子持ちししゃもをフライパンでじっくりと焼いた。換気扇を付けていたが、結構においが籠ったのでいそいそとベランダの窓を開けに行く。(いくらなんでも朝からゴキ〇リは出ないだろう、と覚悟しながら)
すると、右隣の部屋からも窓が開く音がして、のっそりと住人が出てきたようだった。
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