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②
「そういえば槐君、さっきベランダで誰かと話してなかった?」
柴が納豆をかき混ぜながら聞いてきた。同じく納豆をかき混ぜながら、礼二郎は応える。
「うん、魚焼いてるときに窓開けたら右の人が出てきたから、ちょっと挨拶してみたんだ。柴君みたいに友達、とまでは言わないけど……顔見知りくらいにはなれたらなって思って」
「ふうん」
柴は少し面白くなさげな声で返事をした。
「でも30代くらいの男の人だったし、話しかけたのも迷惑だったみたいですぐ部屋の中に引っ込んじゃったから、会話にならなかったよ」
「え、無視されたってこと?」
「うん。すっごい顔色が悪かったから、救急車呼びましょうかって聞いたのになー……余計なお世話だったかな」
今頃、部屋の中で倒れていないといいが。
「んー、二日酔いとかだったんじゃない? 社会人なら」
「なるほど、それはあるかも!」
礼二郎は今まで酒を飲んだことがないので、二日酔いがどういう症状なのかはイマイチ理解していないが。
「……槐君って、優しいよね」
「え、そう? 普通じゃない?」
「見た目も中身も本物の王子様みたい」
「そ、それは褒めすぎだよ、柴くぅん」
礼二郎は王子様みたいと言われることは全くやぶさかではないが、いったいどこの国の王子っぽいと言われているのかはよく分かっていない。(言ってる方もだが)
「いや、虫超怖がるからやっぱりお姫様かも……」
「おいっ」
王子様にだって怖い物の一つや二つくらいあっていいだろー!!
――と反論しようと思ったのだが。
「ん?」
「……!」
柴がやたらと優しい目で見つめてくるので、礼二郎はそれ以上何も言えなくなってしまった。
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