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11:柴のカミングアウト①
「そういえば食器、普通に二人分あったんだね。俺は一人分しか持ってないけど……もしかして彼女の分?」
柴が不思議そうな顔で尋ねた。
「か、彼女なんていない! 食器が二人分なのはおせっかいな兄貴の仕業なんだ、大学生になったら俺にも彼女の一人や二人出来るだろうからって……まったく、大きなお世話だよ」
でも今回普通に役に立ったので、過保護な兄に多少の感謝はすべきかもしれない。
「……ふうん、お兄さんいるんだ。ていうか彼女が二人も出来たら食器足りなくない?」
「たしかに!! いやまあ、結局まだ一人も出来ないんだけどさ」
「彼女を二人作るってところはツッコまないんだね?」
礼二郎はボケ殺しなので――というか本人が天然ボケなので他人のボケに気付かない――柴はくすくす笑いながらセルフで突っ込んだ。
「あっ! そーだよ、俺二股とかしたことないから!」
というか一股もしたことないが、それはわざわざ言わなかった。
「槐君、何で彼女作らないの? 昨日も合コンだったんじゃないの?」
「え、なんでそれを!?」
「昨日部屋尋ねたとき、女物の香水の匂いがしたからね」
そうだった。柴が来る前、自分でも嫌になるくらいに香水臭かったのを思い出した。
「合コンって言っても人数合わせみたいなものというか……俺は行きたくなかったのに、友達が無理矢理連れて行ったんだよ。でも、もう行かない」
「どうして?」
「両隣の女の子が二人とも香水臭くてすごく飯が不味かったんだ。だからもう奢るって言われても絶対行かない!」
「……それは災難だったねぇ」
プリプリ怒りながら言う礼二郎の頭を、柴はごく自然に撫でた。
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