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12:好みの話①
柴は焦っている礼二郎の頭を撫でくり回しながら言った。
「ごめん、警戒させちゃったかな? でも大丈夫だよ、好みだからっていきなり襲ったりしないから。こう見えて紳士です」
「え? 好みって……誰が?」
「槐君だけど?」
「え。俺って柴君の好みなの? 顔が?」
「うん」
「そうなのか……男にも好かれる俺の魅力、凄いな……」
「そうだね(笑)」
礼二郎は柴の言葉に混乱して、他人事のような他人事ではないような、なんだかよく分からないことになっていた。
「外見も好みだけど、話してみて性格も好きだなあって思ったよ」
「俺の?」
「うん、槐君の。可愛くて飽きない」
「まあ俺、顔も性格も良いし運動も家事も出来るパーフェクトヒューマンだから……正直飽きはこないと思う」
「そうなんだ(笑)」
柴は、自分のことを良いように淡々と話す礼二郎が面白すぎて、箸が止まって笑いを堪えきれなかった。
(なんで柴君は俺の言うことにいちいち笑っているんだ? 俺は大真面目なんだが??)
解せぬ、と礼二郎は思った。
「──で、どうする? 俺たち付き合っちゃう?」
「付き合……えぇ!?」
「そういう流れだったんじゃないの?」
「な、流れとは?」
柴の言ってる意味が分からず、礼二郎は思わず聞き返した。
「だから、槐君はさっき俺の事を口説いたでしょ? で、俺も槐君の顔と性格が好みだから付き合ってもいいよってこと」
「なるほどそういう流れか……って、俺口説いてないからぁぁ!! 柴君男の子だよね!? 俺もそうだよ!?」
「俺はどっちもイケるってさっき言ったじゃん」
「えっあれってそういうこと!? 男も女もオッケーってこと!?」
「え、今? ……さっきはどういうことだと思ってたの?」
よく分からなかったが、『イケる』を『行ける』と勝手に脳内変換して……
「電車かバスかみたいな……?」
「んふっww」
ついに柴は腹を抱えて大笑いした。『槐君、最高』と全力で草を生やしながら。
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