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13:天然は怖い

朝食を食べ終えて、それでもまだ時間があるので1時間半後くらいに家を出ようと打ち合わせした。 柴は後片付けをすると申し出たが、昨日のお礼だからと礼二郎は断った。  そして約一時間半後、それぞれの玄関のドアをほぼ同時に開き、二人は家を出たのだった。 「――槐君、さっきは本当にご馳走様。俺は朝から味噌汁なんて絶対作らないから嬉しかったよ。そもそも鍋も持ってないし」 「そうなのか? じゃあ毎朝うちに味噌汁飲みに来る?」 「え!?」 柴は盛大に驚いた。交際を断られたあとなのに、あっけらかんとプロポーズまがいな事を言われたからだ。  もっともオーソドックスな『毎朝君の作った味噌汁が飲みたい』とこちらから申し出たものではなく、相手から『毎朝味噌汁飲みに来る?』という、一風変わったものだが。  ――もちろん礼二郎の言葉は本気のプロポーズなどではなく、単なる天然発言だと柴は正しく理解しているが、分かっていてもついドキドキしてしまうのがオトコゴコロというものである。 「一人分だとインスタントの方が楽なんだけど、俺インスタントの味噌汁ってあんまり好きじゃないからさー……。柴君が良かったら、だけど」 「そんなの俺は嬉しいけど、本当にいいの!?」 「? 俺から誘ってるんだから全然いいけど。あ、でもおかずは今日ほどはたくさん出ないよ。今朝はちょっと見栄張ったのもあるからさ」  てへ、と少し恥ずかしそうに笑う礼二郎。柴はポーカーフェイスを崩さないが、内心は(クッソカワイイな、このイケメン)と色んなところがギュンギュンした。

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