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②
その時、駅でアナウンスが流れた。
《今から電車が通過します、危険ですので白線の内側にお下がりください》
それはくぐもっているが、礼二郎の耳にも届いた。
(まさか……)
『うふふ、気付いた? そう、そのまさかよ』
間違いない。霊は電車が通過するタイミングで、サラリーマンを線路に突き落とそうとしているのだ。――礼二郎の身体を使って。
(い……いやだ、やめろ、やめてくれ!)
『私はコイツに同じ方法で殺されたのよ。だからコイツに同じことをやって何が悪いの?』
(だからって俺の身体を使う必要はないだろぉぉ!?)
『だって貴方、他の人間と比べてすっごく入りやすかったんだもの。こんなチャンス二度と無いでしょ? だから手を貸してよね』
(いやだァァ!! 人殺しになんかなりたくないー!!)
「な、なあ君、積極的なのは嬉しいんだけどいったんこの手を離してくれないか? ちょーっとだけ痛いっていうか……もうすぐ電車が通過するし、この場所は少し危ないかなーって」
(逃げておじさん、俺から逃げて……!)
全身全霊でそう訴えているのに、身体は全く動かないし手も動かない。
リーマンの腕をかなりの力で握りしめているので、自分自身の手も痛い。
「槐君! クソッ、離れないな……」
「なあ君、一瞬だけ! 一瞬だけでいいから手を離してくれないか!? 腕がもげそうに痛いんだァ! 君の愛はもう十分に伝わったからー!!」
「オッサンうるせぇ! 集中できねーから黙れクソが!」
「な、なんだと~!? 痛い痛い~!!」
礼二郎の反応が無いせいか、さっきから柴がバシバシと激しく背中を叩いてくる。(そして何故かリーマンを口汚く罵倒している)
それでも礼二郎の身体はピクリとも動かない。サラリーマンは自ら身を捩って礼二郎から離れようとしているので、今手が離れたら自分から線路に飛び込む形になってしまう。
(タイミングが来たら、手が離れる)
ゴオォッと激しい音を立てながら、電車が近づいて来る。
(い、いやだ……誰か……!)
『うふふ……死ね』
女がそう囁いた、その瞬間。
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