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18:柴の正体①
礼二郎はさっきの出来事を未だ消化できず、可愛らしくぴょこぴょこと左右に振れる柴犬の尻尾を見つめたままぼーっとしていた。
すると、柴が口を開いた。
「えーっと……何から話せばいいかな。さっきはいきなりキスしてごめん。あの女の人、よっぽどあのおっさんを恨んでたのかなかなか槐君から離れてくれなくて……直接俺の力を吹き込んだんだ。あ、背中もバシバシ叩いてごめん、痛かっただろ」
「俺の力、って……?」
「俺の霊力」
「おれのれいりょく?」
礼二郎はマンガの話かな……? と一瞬現実逃避しかけたが、柴が真剣な顔をしているのでそのツッコミは一旦飲み込んだ。
それにたった今マンガのような出来事が起きたのは、まぎれもない事実なのだ。
「この柴犬は俺の相棒で、名前は虎鉄。可愛いだろ?」
「コテツ……こてっちゃん……」
「既にあだ名呼びか(笑)よかったな、虎鉄。槐君はお前に好意的だぞ」
ワン!
「いやいや、こんな可愛いわんちゃんに好意的じゃない方がおかしいでしょ」
「そんなことないよ、小型犬が苦手な人って結構いるし」
「そうなんだ……可愛いのに」
「霊だけどね」
「ッ!」
突然そう言われて、霊だと分かっているのに礼二郎はビクッと肩を揺らした。たとえば可愛いクマのぬいぐるみを愛でているときに突然、『熊って本当は肉食獣だけどね』などと言われたような感じだ。
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