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「……まあ、うん、良かったよ。これでもうゴキに怯えずに済むっていうか……柴君と仲良くなった理由はそれだけじゃないけどな!」  ゴキ退治のためだけに友達になったのではなく、純粋に柴という人間が気に入ったから友達になったので、勘違いはしないでもらいたい。  しかし池永は、礼二郎がゴキがどうとか言うのは単なる照れ隠しだ、とピンときた。(きてない) 「お前ってそういうとこあるよな、ちょっと柴君の気持ちが分かるような……いやいや、俺はちえりちゃん一筋だけどさ!」 「なんかよく分からんが聞け池永。柴君はな、ゴキからだけじゃなくて、れ……痴漢からも俺を守ってくれるって言ってくれたんだぞ! 凄いだろう」  思わず『霊からも』と言いかけたが、なんとか回避した。とにかく、いかに柴が親切な人間であるかというのを池永にアピールしたかったのだ。 (うっかりゴーストバスターだってこと、バラさないようにしないとな。それが一番自慢したいとこだけど) 「へ~! ……つーか礼二郎、痴漢に遭うのかよ」 「そうだ。笑いたければ笑うがいい」  柴に『笑い事じゃないよ』と言ってもらえたせいか、別に池永に笑われたって構わない気がした。 「笑わねぇよ。やっぱりお前くらいの美形だと男でもそんな目にも遭うんだな、別に俺にも言ってくれれば守ってやったのに」 「え」  柴とまったく同じな池永の反応に、礼二郎はキョトンとしてしまった。もしやイマドキ男が痴漢に遭うのは、別に笑えることではないのだろうか……。  礼二郎は時代遅れな考えの自分を少し反省した。(やられる側ではあるが)

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