54 / 106
②
「えっ、それで惚れたってこと……? 礼二郎、さすがに単純すぎん?」
「な、やべーよな」
「なんか俺、だんだん心配になってきたんだけど」
「ん~でも、まあまあ良さそうな奴だったぞ? 柴クン」
「おい、さっきから何を二人でひそひそ話してるんだよ! なんか文句でもあるのかっ!?」
礼二郎がプンスカと怒りながら言うと、二人は内緒話をやめて揃ってニヤけた顔を向けた。
「な、なんだよ……キモチワルイな」
「……でもなんつーか、付き合うのは時間のモンダイっぽいな」
「おう。礼二郎の方がゾッコンみたいだし……ま、俺たちは温かく見守ろうぜ」
「誰が誰にゾッコンなんだ! 誰が!」
大体、付き合おうと言ってきたのは柴の方だ。
(あれ? ……ってことは、柴君が俺にゾッコンってこと? いやいやいや!! 柴くんはすっごい軽い感じで付き合おうって言ってきたから!! 全然本気とかそういうんじゃなくて、なんていうか……)
柴は礼二郎のことが『好き』だと言った。
顔も性格も好みだと。だから付き合いたいと。
今朝は軽く流してしまったが、よくよく考えたらこのうえないくらい、ちゃんとした告白ではないだろうか。
(……ど、どうしよう……)
「ふは、真っ赤じゃあん! こんな礼二郎初めて見た、可愛いなー」
「照れんな照れんな、俺たちは応援してやるからな」
「~~っっ、うるさい! もうほっとけよ!」
礼二郎は顔を真っ赤にしたまま二人に背を向けて、駅方面へ小走りで向かった。
ともだちにシェアしよう!