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「えっ、それで惚れたってこと……? 礼二郎、さすがに単純すぎん?」 「な、やべーよな」 「なんか俺、だんだん心配になってきたんだけど」 「ん~でも、まあまあ良さそうな奴だったぞ? 柴クン」 「おい、さっきから何を二人でひそひそ話してるんだよ! なんか文句でもあるのかっ!?」  礼二郎がプンスカと怒りながら言うと、二人は内緒話をやめて揃ってニヤけた顔を向けた。 「な、なんだよ……キモチワルイな」 「……でもなんつーか、付き合うのは時間のモンダイっぽいな」 「おう。礼二郎の方がゾッコンみたいだし……ま、俺たちは温かく見守ろうぜ」 「誰が誰にゾッコンなんだ! 誰が!」 大体、付き合おうと言ってきたのは柴の方だ。 (あれ? ……ってことは、柴君が俺にゾッコンってこと? いやいやいや!! 柴くんはすっごい軽い感じで付き合おうって言ってきたから!! 全然本気とかそういうんじゃなくて、なんていうか……)  柴は礼二郎のことが『好き』だと言った。  顔も性格も好みだと。だから付き合いたいと。  今朝は軽く流してしまったが、よくよく考えたらこのうえないくらい、ちゃんとした告白ではないだろうか。 (……ど、どうしよう……) 「ふは、真っ赤じゃあん! こんな礼二郎初めて見た、可愛いなー」 「照れんな照れんな、俺たちは応援してやるからな」 「~~っっ、うるさい! もうほっとけよ!」  礼二郎は顔を真っ赤にしたまま二人に背を向けて、駅方面へ小走りで向かった。

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