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25:バイト先にて①
「礼二郎君、なんだか今日はボーっとしてるわね、大丈夫?」
礼二郎はバイト先の緑のコンビニの店長夫人と二人でレジに並び、客足が途絶えたところでそんな心配をされた。
「あ……大丈夫です。すみません、典子 さん」
「でも礼二郎君みたいなイケメンが憂いを帯びた顔をしてると、コンビニの制服を着てても絵になるわねぇ~。恋でもしてるの? ナンチャッテ☆」
「え!?」
「あら、もしかして図星だった!?」
「いやっ、別に、そーいうわけではないんですけどっ……!」
店長夫人の田丸典子は母親と同じような年齢だが、アイドルが好きらしく何かと一人暮らしの礼二郎の世話を焼いてくれるのだった。(ちなみに礼二郎と同じ年頃の息子がいるが、息子よりもはるかに礼二郎に愛を注いでいる)
「えーっ!! 礼二郎君、ついに彼女ができたのぉ!?」
礼二郎が返事に困っていると、店内で掃除をしていた同僚の松本が興味津々といった風に話しかけてきた。
松本は礼二郎よりも少し年上の女性で、大学の近くにある美容専門学校に通っている。マッチョな男がタイプらしく、礼二郎のことは観賞用イケメンとして弟のように可愛がっている。
「ち、違いますよ! 彼女なんていません」
「でも好きなひとができたんでしょう?」
「好きなひと……っていうか……ちょっと気になる、だけで……」
そんなんじゃないのに、と思っていてもカーッと顔が勝手に赤くなってしまう。ウブな礼二郎の反応に、女性店員は二人とも内心(ひゃああああ♡♡)と浮き足立った。
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