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29:特別な存在①
絶望している礼二郎をよそに、礼二郎の持ってきた買い物袋を手にした柴が遠慮がちに聞いた。
「あの、礼二郎君。これ冷蔵庫に入れた方がいいものとか入ってないのかな?」
「あっごめん! うん、肉類は既に買ってたから大丈夫!」
「晩御飯どうしようか。買いにいく? それとも外食する?」
「柴君が良かったら、その……」
礼二郎は家にレトルトのカレーがあるからそれでもいいか、と聞いた。
「え、全然いいよ! でもどうしよう、ご飯がない」
「うち、冷凍ご飯もあるから」
「すごい」
柴は主婦のような礼二郎に素直に感心した。ちなみに柴は炊飯器すら持っていない状況だ。
しかもテーブルすらもないので(食事はデスクで取っている)結局また礼二郎の部屋に行くことになった。
「ごめんね、わざわざ呼んだのに飲み物すら出さなくて……っていうか出せないんだけど。カップも一人分しかないんだ」
「いいよ、除霊してくれただけで十分だから。……柴君も、友達とか彼女、部屋に呼ばないんだな?」
礼二郎は今朝自分も聞かれたことを聞いてみた。
「うん。理由は大体礼二郎君と一緒だよ」
「そ、そっか。……でも俺はいいんだ?」
「礼二郎君だからね」
礼二郎はなんだか嬉しくなった。柴は自分のとって特別な存在だが(命の恩人ということもあり)自分も柴の特別だ、と言って貰えているようで……。
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