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すると柴は礼二郎の両肩をガシッと掴んで引き剥がし── 「……礼二郎って俺のこと好きなの!? いつから!?」 少しらしくない、今までで一番落ち着きの無い反応をした。礼二郎はそんな柴に驚きつつも、普通に返した。 「普通に昨日からじゃないか? 昨日会ったんだし」 「俺は以前から、ていうか入学直後くらいから礼二郎のこと知ってたけどね! え、超嬉しい……けどどうして!?」  礼二郎は柴にそんなに前から存在を知られていたのか、と思うとまた胸がきゅんとした。(とは言っても、二人とも入学してまだ一ヶ月くらいである) 「どうしてって?」 「だって礼二郎はノンケでしょ、俺が昨日好みだとか付き合おうとか言ったから流されてるだけなんじゃないの?」 「……もしかして冗談だったのか? 俺のことが好みっていうの……」 だとしたら悲しい。 たとえそうだとしても、礼二郎が柴を好きになったことには変わりないのだけど。 「冗談なわけない! そりゃ、昨日話すまでは礼二郎の顔だけが好きだったよ? でも話してからは性格もひっくるめて好きだって思ったよ。純粋で優しくて、ちょっとナルシストで泣き虫な礼二郎のことが! ……でも、だからって俺のことを好きになって貰えるとは思ってなくて……友達として懐かれてるのは分かってたけどね」 「……好きにならない方が良かったか?」 礼二郎はわざと聞いた。ただ否定されても、それは無理な話なのだが。 「んなわけないじゃん! めちゃくちゃ嬉しいよ! あー、俺さっきから凄いカッコ悪いな……ごめん、嬉しすぎて脳がバグってる」  柴は口元を押さえて照れている。大体礼二郎の方が焦って泣いて笑われるパターンなのに、今は逆だ。 それが嬉しくて、愛しい気持ちが湧いてきて――礼二郎は、多分じゃなくて普通に柴のことが好きだな、と思った。 「さっきキスしたとき、もう俺の気持ちは気付かれてると思ってた」  自分では気付いていなかったのだが。(それもどうかと思うが) 「……まあ、脈無しではないな、と。大学生だし、コミュケーションの一環として受け入れてくれてるのかなと思って……」  それを聞いて、礼二郎はむっとした。

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