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 柴はそんな礼二郎に苦笑しつつ。 「今まで男友達ですら部屋で二人になれなかったのは、二人きりになるとたとえ男でも襲われるんじゃないかって霊が危惧したからだろうね……」  と、分析した。ここまで可愛いとたとえノンケの男でも、キスのひとつやふたつしてしまうに違いない。そして礼二郎は沢山の男の新しい扉を開けてしまう存在になっていたことだろう。霊が出なかったらと思うと恐ろしい。 「京介はさっきから何の話をしてるんだ? キス、しないのか……?」 「する」  柴は礼二郎を再び強く抱きしめて、礼二郎の丸いおデコや柔らかなほっぺにチュ、チュ、と可愛いキスをした。  恋人同士のロマンチックなキスを期待していた礼二郎は、まるで赤ちゃんみたいに扱われたことにびっくりした。 「ちょ、え? 口にしないのか?」 「なんか勿体なくなって……」 「なんで!? ていうかもうさっきしただろ! 何を今更勿体ぶるんだよ!?」 「さっきの俺と今の俺は別人。俺は爆発して生まれ変わったの」 「え、まじで意味わからん……」 「そんなに口にキスしてほしいの? 礼二郎はエッチだな」 「はッ……」 (え、え、えっち? 俺が、えっち!?)  からかうように言われて、礼二郎は赤面した。そして開き直った。 「え、えっちで何が悪いんだよ――!! 男だもん!! 霊に邪魔されないのなんて初めてなんだからキスしたいに決まってるだ、ムグ」  最後までは言えなかった。柴に、塞がれてしまったから。

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