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「ちょ、え? ……もう一回言って?」 「ダーリン浮気はゆるさないっちゃ」 「待って。ていうか浮気しないし! ……え、何で突然ダーリン? 物真似?」  柴は礼二郎の突然のダーリン呼びについていけず、ひどく混乱している。 「池永――あ、今日一緒にいた俺の友達がさ、柴君は礼二郎のダーリンなんだろって言ったからちょっと呼んでみたかっただけだよ」  柴が笑うと思って言ったのに、こんな反応をされるのは礼二郎にとって想定外だった。 「え。今朝池永君に会った時は、俺たちまだただの友達だったよね……?」 「うん。だけどもう既に俺の彼氏だって思われてるからな、京介」 「ほう……」  そもそも自分が自身の気持ちに気付いていなかったのに、池永も平尾も鋭い。(どこまで本気で言ってるのかは分からないが) 「──そういえば、こてっちゃんは? いつも一緒にいるわけじゃないんだな」 「うん、基本的に俺の部屋にいるよ。線香のにおいが好きだから離れたがらないんだ。呼んだら来るけど、呼ぶ?」 「うん!」  柴が虎鉄、と静かに呼んだらポンッとラグの上に虎鉄が現れた。尻尾を左右に揺らし、ハッハッと舌を出してご機嫌だ。 「こてっちゃ~ん! さっきぶりだけどかわいい~!!♡♡」 「礼二郎が犬好きで良かった」 「動物ならなんでも好きだよ! 人間は自分と家族以外は愛さないっていうか、そもそも愛せないと思ってたけど!」 「……そうなんだ……」  柴はなんとなく礼二郎の胸中を察して、もう一度(絶対に大事にしよう)と心に誓った。

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