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「……ごめん」  柴は泣きじゃくる礼二郎をギュッと抱きしめた。少し事務的に言いすぎた自分の言動を、少し反省しながら。 「ごめん、いきなり色々言って。普通怖いよな、そうだよな……」 「うう、俺もごめん、すぐ泣いて……。でも、ホントのホントに怖いんだよ……っ!」 「分かってるよ、俺が悪かった。――今夜は俺の部屋で一緒に寝よう? それなら大丈夫そう?」 「え?」 (京介の部屋に……朝まで二人で?)  礼二郎は驚いて――そこまで世話を焼いて貰っていいのか、という意味で――涙はピタッと止まった。 「あ、俺のベッドの方が大きいから……いや俺は床でも全然いいんだけど! そういう意味で誘ったんじゃないから!! 誤解しないで礼二郎、俺はケダモノじゃない!! いや、ケダモノではあるけど……っ!」 「そういう意味?」  とは、どういう意味だろう。それに礼二郎は家主を床で寝かせるつもりはないし、離れたら怖いのでくっついて寝るつもりマンマンだった。 「いや……分かんないならいいんだ。とにかく、今日は俺の部屋で一緒に寝よう。それなら怖くないよね? 虎鉄もいるし」 「うん……」    柴が一緒なら、間違っても隣人の霊が訪ねてくることもないだろう。礼二郎はホッと胸を撫で下ろした。 「あ、もしもし渡邉さん? 俺です。実は――」  柴は誰かに電話を掛けている。名乗らずとも分かってもらえるなんて、相手とは余程親しいに違いない。ホワイト不動産だろうか。何故不動産屋と個人的に親しいのかはよく分からないが…… (あっ、部屋の除霊をするからか!)  その後に気付いた。

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