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37:ホワイト不動産①

 しばらくして、ピンポーンと礼二郎の部屋のインターホンが鳴った。柴が『今302号室に居るって言ったんだ』と言い、礼二郎の代わりに出た。 「――こんばんは、渡邉さん」 「やぁ京介君、夜分に有難くないお知らせをどうも。……ご遺体、ビンゴだったよぅ……ホントに虎鉄ちゃんは優秀だねぇ」 「どうも。で、見た感じ他殺ですか? それとも自殺ですか?」 「!?」  淡々と事実確認をする柴に、礼二郎は驚きを隠せない。まるで殺人事件の現場に、ひどく慣れているような――。 「首を括ってたから多分自殺だろうね。犯人の偽装じゃなければ……ああもう、また事故物件が増えちゃったよぉ! あッ! ていうか僕に憑いてないよねぇ!?」 「……大丈夫ですよ」  礼二郎はリビングから顔を覗かせて二人の会話を聞いていたのだが、不意に不動産屋の男性――渡邉と目が合った。 「おっ……こんばんは、いつもお世話になっておりますホワイト不動産の渡邉慎一(わたなべしんいち)と申しますぅ~」 「こ、こんばんは、初めまして……槐礼二郎です」  同じ不動産会社を介してここに住んでいるが、礼二郎の担当は女性だったので渡邉とは初対面だ。(向こうは店内で礼二郎を見ているので知っている)  ずっとリビングから顔を覗かせた状態でいるのは失礼なので、礼二郎はおずおずと玄関の方にやってきた。    渡邉はグレーの品のいいスーツを着たおっとりとした雰囲気で、年齢は20代半ばくらいだろうか。礼二郎はなんとなく渡邉に対して狸のようなイメージを持った。 「京介君、やっぱり彼と友達になったんだねぇ! もうけっこう仲いいの?」 「さっきから付き合い始めました」 「そっか~お付き合い……エ”ッッ!?」  何故そんなに驚くのだろうと礼二郎は疑問に思ったが、すぐに自分たちが男性同士だからだ、と気付いた。  柴があまりにもサラリというので、違和感を抱かなかったのだ。

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