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38:慣れない状況①
(って、こんなこと気にしてる場合じゃないな。俺の隣の部屋には……考えたくないが、遺体があって、もうすぐ警察が来て俺にも事情を聴きにくるんだ……)
礼二郎は、気合いを入れるべくぎゅっと両手を握りしめた。
「……警察が事情聴取に来たら一応びっくりしたフリしなきゃいけないけど、礼二郎、演技はできる?」
「うん、大丈夫! 俺、こう見えて女優の息子だからな!」
礼二郎は親指を自分に向けて自信満々に言ってのけた。
ほぼお化け役の女優の息子、だが。
「ンー……少し練習しとく?」
「大丈夫だってば!」
(俺、信用ない……高校の時文化祭の劇で主役演ったこともあるのになぁ)
「ところで京介は自分の部屋に戻ってた方が良くないか? 警察に何でここにいるんだって突っ込まれるかも……」
「同じ大学の友達が遊びに来てるだけだからいいんじゃない?」
「あ、そっか」
「俺たちが恋人同士だってことは、警察には秘密にしておこうね」
「わかった」
(なんだか……)
色々と慣れない。
自分の部屋に男友達が一人で遊びに来ていることも。その男友達と付き合うことになったことも。――隣の部屋に、人間の遺体があることも。
最後の状況だけは絶対に慣れたくないが。
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