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39:事情聴取①
ガチャ
「すいません、警察ですが」
「ちょっとお隣の家で事件がありまして……少しお話いいですかー?」
二人組の刑事が、警察手帳を見せながら訪ねてきた。
(おおお、ドラマの『相棒』みたいだぁ……!!)
礼二郎は緊張しながらも地味に感動していた。そしてお互い軽めに自己紹介をしたあと……
「事件って、一体何があったんですか?」
「!」
いきなり礼二郎の後ろから柴が顔を出して、刑事に質問した。
どうやら心配で出てきたらしいが、たしかに遊びに来ているテイなら早めに顔を出して貰って良かったのかもしれない。
「お友達?」
「は、はい。同じ大学の……」
「301号室に住んでる柴京介です」
「あ、そうなんだ。じゃあ一緒でもいいかな……303号室の住人さんね、亡くなってるんですよ」
「エエッ!? ホントデスカァ!?」
「(礼二郎、大根)」
「死亡推定時刻は昨夜──深夜の2時頃で、遺書も見つかったから多分自殺なんだけど、何か物音を聞いたりしなかったかな? 人が争う声とか、誰か訪ねてきたとか」
「……」
深夜の二時──ということは、やはり今朝礼二郎がベランダで会ったのは隣人の霊だったのだ。あの時既に、男性は亡くなっていた。
でも昨夜部屋にゴキが出て、礼二郎が騒いでる時はまだ生きていたということだ。
「……な、何も……何も気付きませんでした。俺、寝る時間わりと早くて……」
柴に助けて貰って、礼二郎が胸をときめかせていたときもまだ……。
(たった壁1枚隔てた場所で、誰にも知られずに、ひとりぼっちで……?)
想像すると、なんだかひどく切ない。
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