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40:事故物件①
「刑事さんは霊とか信じてるんですか?」
柴は逆に質問した。その度胸が凄いな、と礼二郎は素直に感心した。
「ンー……職業柄本気で信じてはいないけど、いるかもなぁって思うことはあるよ。わりと恐がりだからかな」
「恐がり? 俺と一緒だ!」
礼二郎は、親くらいの年齢の刑事に一気に親近感を持った。刑事は意外そうな顔をして──
「君、恐がりなのにここに住んでるのか。大丈夫かい?」
「へっ?」
「ここ、わりと有名な幽霊マンションだろう。君の部屋は大丈夫だったと思うけど、他の部屋は大体事故物件だったような……」
「え??」
礼二郎は再度、ゆっくりと柴の顔を見た。柴は少し困った顔をしていたが、無理やり笑顔を作ると──
「霊なんかいないから、大丈夫!」
わざとらしくそう言った。
*
(どうしよう、こわい)
刑事の聞き込みが終わり、再び柴と二人になり──礼二郎は迷っていた。
今夜は自室で一人で寝るか、柴のベッドで二人で寝るか。
さっきまでは一緒に寝る気満々だったが、柴の部屋が殺人事件てんこ盛りな事故物件だったとなると、話は別だ。
(そりゃ、京介が除霊してるから霊が出る心配はないけど……)
でも、人が死んでいるのだ。
原因は教えて貰えなかったが(知りたくもないが)少なくとも三人以上が自殺か他殺で亡くなっているという。
そんな部屋で一晩を過ごすなんて、生理的に無理だ。怖すぎる。
(ど、どうしよう……)
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