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柴は憂鬱そうな顔で話を続けた。本当に兄弟仲が良くないらしい。 「普通に兄がうちの跡取りなんだけど、あいつほとんど霊が視えてないクソ雑魚霊媒体質なのに、何故か霊を成仏させることだけは得意なんだよ」 「へー、すごいな」 「……長男だし、俺と違って仏教系の大学出てるし、住職になる修行もしてるから跡取りなのは文句ないんだけど」 「うんうん」 「霊を成仏させるのもお経唱えるだけで無自覚でやってるし、クソ雑魚霊媒体質だから視える俺に対して昔からめちゃくちゃコンプレックス持ってて……」 「へえ?」 (視えないなら視えない方が絶対いいのに、珍しい人なんだな……) 正に無い物ねだりというやつだろう。優一郎も礼二郎の霊媒体質を羨ましがっているので、兄同士は気が合うかもしれないな、と思った。 「まあ、そういうことだから成仏させるのは兄の専門で、俺は除霊なんだ」 「ゴーストバスターブラザーズ……!」 礼二郎はキラキラと目を輝かせた。 「まあ、あいつと協力して何かしたことなんてないけどね。――で、今夜は礼二郎どうするの?」 「ああっそうだった~~!!」 問題を思い出した。こうなればもう、手段は一つしかない。 「京介……」 「なに?」 「俺のベッドで一緒に寝てくれ!!」 (マジでもう、こうしてもらうしか他に方法がない……! ) 「え……え? でも礼二郎のベッド、シングルだよね?」 「狭いのは承知してる! ホントに申し訳ない、買う時に誰かと寝ることなんか想定してなかったから……!」 「それは別にいいんだけど。あ、じゃあ俺は床で寝るよ。それなら──」 「は? そんなの絶対ダメに決まってるだろ」 柴は、礼二郎のこんなに低い声は初めて聞いた。眉間に皺を寄せた、険しい顔も。

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