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42:同衾の誘い①
「あ、あのね礼二郎。狭いベッドで引っ付いて寝たら、いくら紳士な俺でも――」
「狭いのは謝る! でも俺そんなに寝相悪くないから大丈夫だってば!! あ、じゃあもう床で一緒に寝よ? それならいい!?」
いいことを思いついたぞ!! という顔で 礼二郎はそう提案した。
「ど、どうしてそんなに俺と同衾したいの……? 今日は襲うつもりないけど、もしかして襲われるかもっていう心配は」
「そんなの一人寝が怖いからに決まってるだろ――!!!!!」
何かブツブツ言ってる柴を遮って、礼二郎は大声で主張した。
「京介、責任取るって言ったよな?」
「い、言いました」
「俺を守ってくれるって言ったよな!?」
「い、言いました……」
「じゃあ一緒に寝て? ダーリン!!」
礼二郎は柴のスウェットを掴み、上目遣いでそう言った。柴は今すぐ礼二郎を押し倒したいという衝動を押さえ、思わず鼻血が垂れそうな鼻も押さえて、
「ハイ……」
と、蚊の泣くような声で返事をした。
*
泊まりの道具を何も持ってきていなかったので、柴はいったん自分の部屋に戻り、歯磨きやら明日の着替えの用意なんかをしていた。ちなみに礼二郎もくっついて柴宅に来ている。(一瞬でも離れたら霊が来るかもしれないからだ。そういう展開はホラー映画ではお約束である)
ただし今度は部屋に上がるのが怖いので、玄関までだった。外の通路ではまだ警察関係者がウロついている。
「京介ぇ~まだぁ~?」
「もうちょっとだから先に部屋戻ってなよ」
「絶対に嫌だッッ!!」
「(笑)」
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