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「お待たせ、礼二郎」 「待った! さ、俺の部屋へ行こう!」 「分かったから引っ張らないで~……」 柴はわりとデリケートらしく、マイ枕を持参していた。すぐ隣の部屋に移動するだけなのに、礼二郎は柴を逃がさんとばかりに腕に絡みついている。  すると通路で、さっきの刑事二人とすれ違った。どうやらそろそろ撤収するらしい。 「あれ、君達。……今夜は一緒に寝るの?」  若い刑事は柴が小脇に抱えた枕を目敏く見て、そう聞いてきた。礼二郎は少ししどろもどろになりながらも、正直に答える。 「は、ハイ。ちょっと今夜は一人寝が怖すぎるので……!」 「ふーん、君達そういう関係だったのかぁ」 「? お仕事お疲れ様でした!」 「うん。まだ仕事中の人もいるから、あまり大きな声は出さないようにねぇ」 「? ハイ」  礼二郎は素直に返事をした。刑事二人はひらひらと手を振り、通路突き当りのエレベーターに乗り込んだ。 「……なんか、バレちゃったね」 「うん、俺が怖くて一人で寝れないことが警察にバレたな……堂々としててもやっぱり少し恥ずかしいよ」 「(そっちじゃない)」  柴は声に出してツッコまなかった。

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