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43:男同士でも①

「……なんか、ドキドキする」 「そりゃあねえ」  いつもより狭いベッドに収まったあと、礼二郎はもしかして自分はとんでもない提案をしてしまったのではないかと、今更ながら気がついた。  誰かと同衾したのは、小学校高学年のときが最後だった。相手は当時高校生だった兄で、中学に上がってからも怖い目に遭うと兄と一緒に寝たいと思ったが、さすがに恥ずかしさが勝ってしまい一人で耐え忍んだ。  それ以来、誰かと一緒に同衾した経験などない。なのに何故、柴には『一緒に寝て欲しい』とあっさり言えたのだろう。  霊が怖いとはいえ、さすがにはしたなかったんじゃないか……と今更自覚してカァッと赤くなった。 「礼二郎、そんな顔しないで……襲いたくなっちゃうでしょ?」 「う、うぇえ?」 「うぇえって(笑)」  柴は礼二郎を抱き締めるように手を伸ばして、縮こまっていた背を撫でた。たったそれだけの刺激で、礼二郎の身体がピクッと反応する。 「俺もすっごい我慢してるけど、それ以上に礼二郎が意識してくれて嬉しいよ」 「が、我慢って……襲いたくなるって、男同士で一体何が出来るんだよ……」  男女ならいざ知らず、男同士で繋がることは不可能だろうと礼二郎は思っている。同性愛者は皆、プラトニックな関係だと思っているのだ。 「何って……男同士でも普通にセックスできるよ」 「えっ?」 「挿れなくても、なんでも出来るよ。男女で出来ることはひととおり。違いは妊娠するかしないかだけ、かな」 「え、え? でも……」 (どうやって……?)  しかし、今この状況でそれを柴に聞くのはあまりにも軽率な気がした。

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