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 それを意識した途端、礼二郎は京介の腕の中にいるのが急に恥ずかしくなってしまった。顔に息が掛かるし、布越しにずっと尻を掴まれているので、だんだん変な気分にもなってくる。 「……あ、あの……ご、ごめん、俺……ッ! なんか急に恥ずかしくなってきた……!」  今まで両親と兄以外で同衾した者なんかいない。歴代彼女は名ばかりで、誰一人キスすらマトモに出来なかった。  でも、京介とは出来た。同衾も、ファーストキスも。  なら初めてのセックスも京介とするんだろう、と礼二郎は思った。 「俺と付き合うの、やっぱり嫌になった?」 「ち、違う! そんなこと思ってない!」 「……ホントに?」 「本当だ!」  言葉にはできないが、なんだかひどく恥ずかしい。右隣に自殺死体があったことも、ここが幽霊マンションと言われていることも、京介の部屋がいわくつきすぎる事故物件だということも、全部頭から吹っ飛んでいた。 「礼二郎、今は怖くない?」 「こ、こわくない、けど……」 「けど何?」 「き、緊張、してるんだよっ……俺、今更意識してほんとごめん……」  顔を真っ赤にして申し訳なさげにいう礼二郎に、京介は思わず噴き出した。 「俺、礼二郎には性欲無いのかなって思ってたから少し安心したよ。それに今日はホントに何もしないから」 「う、うん?」 「俺、礼二郎のこと大事にするって決めたんだ。──あ、でもそっちから誘われたら遠慮しないからね、あまり煽らないでよ」  そんなことを言われても、自分のどういう行動が京介を煽ることになるのか礼二郎には分からない。

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