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44:そんな君が好き①
「ご、ごめん。俺、勉強も運動も得意だけど、そのテのことだけはよく分からない……自分には関係ないからってわざと避けてたのもあって……だから、京介が俺の事嫌になったらいつでも――」
振っていいから。
そう言うつもりだったが、手で口を塞がれた。
「むぐ!?」
「そういうこと言わないで。それに俺は礼二郎が思っているより重い奴だから、絶対に俺から離れたりしないよ」
「……ぷはッ! で、でも今まで恋人とは自然消滅が多かったって――」
(言ってたじゃないか! だから俺の事だって……)
礼二郎は京介の手を引きはがすと強気で抗議した。自分もそうなりたいわけではないが、なんとなく気になっていたのだ。
「それは、相手が礼二郎じゃなかったからだよ」
「……え?」
「今までの俺に、超新星爆発は起こらなかったからね」
「あの、チョーシンセーバクハツって何だっけ……?」
京介はさっきからやたらと『爆発した』と表現しているが、それが礼二郎には意味がよく分からなかった。
「ん? んーと、……ガチな意味は太陽みたいに重たい恒星が、死に際に大爆発を起こすことだよ。──つまり、俺にはそれくらい衝撃的だったっていう比喩表現だね」
「な、何がそんなに衝撃だったんだ?」
「そりゃ、礼二郎の可愛さがだよ」
「!?!?」
(お、俺は今まで自分のことは美しいとかカッコイイと思っていたけど、京介みたいなクールな奴が自分で大爆発を起こしてしまうほど可愛かったのか……!? 知らなかったぁぁ!!)
礼二郎の目から鱗がボロボロと落ちた。
さっきまでは顔を赤くしてあやうい色気を醸していたというのに、それが一気に消え去ったいつもの礼二郎が可笑しくて可愛くて、京介は静かに笑った。
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