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礼二郎は同じ布団の中で、メガネを外した京介のやや切れ長の目をキラキラした瞳で見つめながら言った。 「俺、自分が美しくてカッコイイことなら超知ってたけど、まさか可愛いもあるなんて知らなかったよ! 目から鱗だ」 「知ってるのは俺だけでいいんだけどね。でも礼二郎の周囲の人間はみんな、礼二郎が可愛いってこと知ってるよ」 「マジか……!」 (つまり、家族も友達もバイト先の人も全員、俺を可愛いと思っているということか! 俺って本当に罪な男だな……!!) 「……でも、礼二郎の本当に可愛い顔を見せてもらうのは俺だけだから」 「うん?」 「今から、楽しみにしてるよ」 (俺の、本当に可愛い顔?)  それは何だ。つまり今の自分は真実可愛くはない、ということだろうか? 礼二郎には京介の言葉の意味が分からない。 分からないが――考えていたら、だんだん眠くなってきた。 「ほら、明日の講義は何時から? もう寝ないと起きられないよ」 「んぅ……また、一コマ目から……」 「礼二郎って珍しいよね、普通そんなに朝早くから講義入れてる奴ってあんまりいなくない?」  京介のおっとりした低めの声は、耳に優しい。ずっと聴いていたいと思う。 「……俺、夜が苦手だから早く寝る方だし、そうすると朝が早いんだ……」 「なるほどね、朝型なんだ。じゃあ俺も礼二郎に合わせようっと」 「京介は、じふんの好きな時間に寝て……おきて……」  礼二郎の綺麗な二重瞼がゆっくりと閉じられていく。今夜はレトルトだがご飯もしっかり食べたし、お隣の件で精神的に疲れたし、恋人と同衾していてあったかい。  すぐにでも眠れる要素が、こんなにも揃っている。 「おやすみ、礼二郎。これからよろしくね」 京介は返事をしなくなった礼二郎の唇にそっとキスを落とし、暫くその美しい寝顔を堪能していた。

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