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第3話
夜中、清明はひどい寒気がして目を覚ました。
外はまだ暗く、どのくらい眠っていたのかわからない。全身が泥に埋まったように重く、身動きを取ることもできない。
どうにか起きあがろうとして、伸ばした腕が近くにあった何かにぶつかった。
すると清明の足元から、思いがけず春雷の声が聞こえてきた。
「どうした?」
同じ寝台で、すぐ隣に春雷が寝ていたのである。
清明の寝ている向きとは反対に、頭の方に足を、足の方に頭がくるように横になっている。
清明が驚いて無言になっている間に、春雷はあくびをしながらのっそりと起き上がって清明の額に手を当てた。
「ひどい熱だな」
春雷は寝台から降りて履き物を履き、机の上に用意してあった薬の入った湯呑みを持って戻ってくる。
清明の上半身をひっぱり起こすと、座った自分にもたれ掛からせて座らせた。
「気分が悪い……」
「これだけ熱が出ていれば仕方ない。ほら、薬を飲んで」
清明は湯呑みを受け取り、香辛料や植物の青臭い匂いのする液体を眉間に皺を寄せながら一気に飲み干した。
薬はすでに冷めていたが、苦くて吐き出しそうになる。清明は液体が胃に落ちるまで、しばらく目をつぶって耐えていた。
春雷は清明の手から湯呑みを取って寝床の端に置き、清明の体をそっと横に寝かせる。布団をかけ直してやって、自分もまた寝転んで、布団をごそごそと掛けて寝る姿勢になった。
掛け布団は一応別々だ。
「狭くてすまないが、他に場所がないから私もここで寝る。具合が悪くなったら遠慮なく起こしてくれ」
と言ってすぐ寝息を立て始めた。
清明はこのように狭いところで誰かと一緒に寝たことなどなかった。しかし、起き上がることすらままならない状態では、それがありがたいと思えるのだった。
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