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第4話

 それから数日寝て過ごすうちに、体の具合もずいぶん良くなって周りの様子を観察する余裕も出てきた。  と言ってもこの部屋は狭く、小さな寝床と机があるくらい。  春雷が借りて住んでいる部屋のようだった。  部屋に何度か清明の様子を見に来た、玄天先生と呼ばれている老医師がこの家の主人のようだった。  小柄で温厚な雰囲気だが、患者の体に触れて思考を巡らせている時の目は鋭い。  傷の具合を見て、春雷に手短かに指示を出し、清明には励ましの声を掛けてくれた。  部屋の外から聞こえてくる人の出入りの多さから、それなりに腕のある医師と思われた。  春雷は、昼間は病人がいれば母屋で老医の手伝いをしているか、雑用をこなしているようだった。そして度々、気分はどうだ?喉は渇いてないか?と、清明の様子を見に戻ってきた。  夜になると寝台に座って遅くまで書物を読んでいることもあれば、早々に寝てしまう日もあった。  相変わらず、寝る時は清明の隣に反対向きに寝転がって同じ寝台で眠っている。慣れてくると何ともないが、清明も春雷もそこそこ身長があって体格が良いのでやや狭くは感じる。  清明は、勢いよく寝返ってぶつからないようにしなくてはと思った。  春雷は、今日は調べ物をするつもりなのか数冊の書物や巻物を持って清明の足元あたりに腰掛けた。  しかし、ものの数分でうとうとと舟を漕ぎはじめてしまった。  清明には心当たりがあった。  昨晩、眠りについた後、夜中にうなされる声で目が覚めた。  また自分が熱でうなされていたのかと思ったが、起きてみると春雷が寝ながら唸っていたのだ。  清明は腕に力を入れてなんとか上半身を起こす。  春雷は眠ったまま顔をしかめて、喉の奥から搾り出すような声を出している。 「どうした?春雷?」  春雷の足を揺すってみる。 「……ん……」  声が鎮まって、ゆっくり目が開く。 「どうした?随分うなされていたぞ」  焦点が合わないまま何度か瞬きし、清明に気付く。 「夢を見ていた……」 「そうか……。まだ夜中だ……寝直そう」  二人はそのまま眠ったが、春雷は明け方に再び何かうわ言を言いながら苦しみはじめ、清明はまた目を覚ました。  清明もさすがに眠気に負けて、寝転んだまま手を伸ばして春雷の脚を探る。寝台は狭く、脚はすぐ側にあった。  クロを撫でる時と同じように脚をさする。 「大丈夫だ…………」  春雷の強張って震えていた脚は、しばらくして静かになった。  清明もいつの間にか眠っていた。

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